【コラム】レキシの楽曲の面白さを初Sg『SHIKIBU』を聞いて考える

【コラム】レキシの楽曲の面白さを初Sg『SHIKIBU』を聞いて考える

昨年発売された4枚目のアルバム『レシキ』でレキシは多くの音楽ファンを唸らせた。そして、2015年11月25日に待望の新作がリリースされた。初のシングル作となる『SHIKIBU』、これがまたもや素晴らしい作品に仕上がっていて、早くも次のアルバムに期待が膨らんでしまう。今回はタイトル通り「紫式部」がテーマで、官能的でロマンチックな式部の文学世界を軽快なダンスミュージックで表現。それにしてもなぜこれほどまでにレキシの音楽は、私たちの記憶に焼き付くのだろう。AORの洗練、シティポップの心地好さをこともなげに体現する、池田貴史のミュージシャンとしてのずば抜けたセンスは言うまでもない。そんな抜群のセンスに裏打ちされた楽曲は、ぶっちぎりで楽しくて面白くて、何より、そこで歌われている歴史上の人物やその時代に生きた名もない人たちの感情が、リアルな息吹として感じられるのが素晴らしい。

例えば、1stアルバム『レキシ』収録の〝参勤交代″では《負担だってんだ、江戸に妻子を住まわす、/ハナレバナレで暮らす/参勤交代、下にぃ、下にぃ》と、大名の不満がわかりやすく歌われ、2ndアルバム『レキツ』収録の〝狩りから稲作へ″では、《場所にあきたらすぐ立ち去る》縄文人が、《ともに暮らそう/屋根の下/稲作定住》と、稲作中心の弥生時代へと移っていく様子を、男と女の恋心になぞらえて歌う。縄文時代だって平安時代だって江戸時代だって、そこに生きた人はそれぞれに、私たちと同じく感情を持つひとりの人間だったのだと、そんな当たり前のことを実感させてくれて、遠い昔の出来事が現実感をともなって脳裏に焼き付いていくのが面白いのだ。そういえば中学でも高校でも、歴史の授業では、淡々と時代の流れを追って暗記させるだけの先生の話はちっとも頭に入ってこなかったけれど、人物の気持ちを織り交ぜながら歴史上の出来事を熱く語ってくれた先生の話は、不思議と今も記憶に残っていて、レキシの音楽を聴くと、そんなことを思い出したりもする。それはレキシが、本気で日本史を面白がっていて、それを音楽として表現することを心から楽しんでいるからにほかならない。

でも、〝Takeda’ feat. ニセレキシ″(ニセレキシ=U-zhaan。4thアルバム『レシキ』収録)みたいな、純粋に腹を抱えて笑ってしまうような楽曲もレキシの魅力のひとつ。そんな爆笑ソングにしても、織田信長に敗れた武田信玄が切なく感じられたりもして、コンセプトのブレなさと遊びの幅は、やはり持ち前のバランス感覚のなせるワザである。そうそう、今回のシングルにはカップリングで〝Takeda’ 2 feat. ニセレキシ″も収録されているので、こちらも必聴!(杉浦美恵)
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