昨年7月にサード・アルバム『カレンツ』をリリースしたテーム・インパラが、昨日4月25日に東京・Zepp Tokyoより初の単独ジャパン・ツアーをスタートさせた。
RO69では、同公演のオリジナル・レポート記事をお届けします。
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【テーム・インパラ @ Zepp Tokyo】
3作目のアルバム『カレンツ』がリリースされたのは昨年7月のことで、早く今のテーム・インパラを観たい、と思ってはいたのだが、結果的には待った甲斐があったのではないだろうか。演奏もヴィジュアル演出とのシンクロも熟成し、楽曲はナイーヴでも自信満々にプレイするバンドの姿が印象的だった。2013年フジロック以来の来日にして、東京と大阪でのスケジュールが組まれた初の単独ジャパン・ツアー。4/26のなんばHatch公演を楽しみにしている方は、以下本文のネタバレにご注意を。
ステージ背景に投射される光の点が高速回転して模様を描き出し、首謀者ケヴィン・パーカー(Vo・G)、ドミニク・シンパー(G・Syn)、ジェイ・ワトソン(Syn・Cho)、キャム・エイブリー(B)、ジュリアン・バルバッガロ(Dr)と5人のライヴ・メンバーが出揃うと、ケヴィンのカッチリと統制された空間系ギター・ワークが押し寄せてくるというオープニング。ミニマルだが、テーム・インパラらしい憂いた情緒を伝えてくる。そして「Here we go!」の掛け声一閃、しなやかなビートと刺激的なシンセのレイヤーが前面に押し出され、『カレンツ』のモードで“Let It Happen”が繰り出されていった。少年性を帯びた歌声を届けるケヴィンだが、ここで早くもテープキャノンが放たれて祝祭感を増幅させてしまう。
前作『ローナイズム』からは“Mind Mischief”の反復するリフとハーモニーで歓声を攫い、コンテンポラリーなサイケ・ポップが確かな肉体性をもって育まれてゆく。再来日と大勢のオーディエンスの来場を喜ぶケヴィンが軽く挨拶を投げかけると、胸を掻き毟るようなメロディの“Why Won’t They Talk to Me?”には、ジェイのハーモニーが寄り添っていった。サウンドとシンクロする映像演出も一貫して素晴らしい。音楽から意識を奪い過ぎることのない、最も効果的なバランスを狙いすました演出だ。この「バランス」という点がテーム・インパラの最も特徴的な部分でもあって、エレクトリックとエレクトロニックのバランス、ポップと実験性のバランスが破綻することなく成立し、着実に体験を共有させてゆく。
ドミニクもギターを握る“Elephant”の獰猛でスリリングなアタックを見せた直後には、一転して甘美な“Yes I’m Changing”で一面のハンド・ウェーヴを誘い、そして「パーティ・タイムだトーキョー!」と呼びかけて“The Less I Know the Better”へと突入する。ウェットなディスコ・サウンドが、熱狂的なダンスというよりも感傷を呼び起こすために鳴らされていた。少なくともテーム・インパラにとって、サイケデリアとはぼんやり漠然とした表現ではなく、明確な意図を持った表現なのである。
ケヴィンによるギターのインプロに、緑色の光が感応して動き回るという一幕の後には、“Why Won’t You Make Up Your Mind?”がダイナミックに展開し、最高潮に眩いサウンドを届けてくる。そして本編を締めくくるのは、シンフォニーのようなバンドサウンドで奏でられる“Apocalypse Dreams”だ。プライヴェートなスタジオ・ワークで、ケヴィン・パーカーがほぼ一人で紡ぎ上げた音楽が、確かに大勢の人々の心を揺らす。「孤独を共有する」という魔法の時間の果てに、大喝采を浴びるのだった。
アンコールの催促に応えて再登場したケヴィンは、「日本で初めてのヘッドライナー・ショウだよ。本当にどうもありがとう」と感謝の思いを伝え、当時ド新人として出演したサマーソニックや、前回のフジロックを振り返る。“Feels Like We Only Go Backwards”でシンガロングを呼びかけた後には、念を押すように何度も「またすぐ戻ってくるよ!」と告げ、新作から“New Person, Same Old Mistake”で今回のステージを締め括った。陶酔感とエモーションが際限なく膨らみ、練り上げられたステージングの中で根本的な曲の良さが際立つ、最高の一夜だった。(小池宏和)
〈SETLIST〉
01. Intro
02. Let It Happen
03. Mind Mischief
04. Why Won’t They Talk to Me?
05. It Is Not Meant to Be
06. The Moment
07. Elephant
08. Yes I’m Changing
09. The Less I Know the Better
10. Eventually
11. Alter Ego
12. Oscilly
13. Why Won’t You Make Up Your Mind?
14. Apocalypse Dreams
En1. Feels Like We Only Go Backwards
En2. New Person, Same Old Mistake
●ライヴ情報
「Hostess Club Presents Tame Impala」
日時/会場:
2016年4月26日(火)大阪・NAMBA HATCH
OPEN 18:30 /START 19:30
<問>
大阪・キョードーインフォメーション 0570-200-8888
※未就学児(6歳未満)入場不可
更なる詳細は以下のサイトで御確認ください。
http://ynos.tv/hostessclub/schedule/20160425.html
