【ライブレポ】初の野音開催、6度目の清志郎「ロックン・ロール・ショー」を観た!
2016.05.09 19:30
5月7日に、日比谷野外大音楽堂でライブイベント「忌野清志郎ロックン・ロール・ショー 日比谷野外大音楽堂Love&Peace 」が開催された。RO69では、この模様をライブ写真とレポートでお届けする。
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2011年以来、通算6度目を迎えた「忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー」は、これまでに武道館で3回、渋谷公会堂で2回のステージでさまざまな豪華アーティストたちの共演が繰り広げられ、今回はGW中の野外イベントとして開催された。生前の清志郎も数多くの名演を残してきた、日比谷野音である。快晴に恵まれ、16:30から約4時間に渡るステージの幕開けだ。自転車を駆って野音へと乗り付ける清志郎の勇姿がスクリーンに映され、「イエ〜イ!!」というあのソウルフルなシャウトも聞こえてくる。
トップバッターは、今回の出演者中随一の若手(と言ってもすでに立派なキャリアを歩んでいるけれど)、黒猫チェルシーである。澤竜次(G)のルーズなギターリフに導かれ、渡辺大知(Vo)が歌い出すのは、いきなり渋い選曲でグルーヴにまみれる“ガラクタ”。彼は昨年、若き日の清志郎にそっくりな若者の役でTVドラマ(NHK『忌野清志郎 トランジスタ・ラジオ』)に出演したことや、2009年、上京した翌月に憧れの清志郎を失ったことを語り、「死んだらセッション出来るように、現世で思いっきりやりたいと思います!」と意気込みをほとばしらせる。びっくりするほど骨太なアレンジの“ぼくの好きな先生”や“多摩蘭坂”も素晴らしかった。
続くサニーデイ・サービスは、曽我部恵一(Vo・G)と田中貴(B)そしてサポートメンバーに鈴木正敏(Dr/初恋の嵐)という3ピース編成。曽我部が「僕の長女の名前は、ハルコといいます。身長は普通です」と笑いを誘う“大きな春子ちゃん”など、RCサクセション『シングル・マン』収録曲を次々に放つ。再評価の機運もあって今や名盤と呼ばれるアルバムだが、リリース当時はすぐに廃盤の憂き目にあったことで知られている。楽曲のピュアなエモーションを抽出し、清志郎に思いを重ねるように披露される“ヒッピーに捧ぐ”が凄い。最後には、自転車のベルをチリンチリンと鳴らし、曽我部がソロで自分自身の歌にしてしまう“ぼくの自転車のうしろに乗りなよ”が届けられた。
さて、森純太(G)の鉄板リフが轟く“ロックン・ロール・ショー”をはじめ、必殺チューン連発で会場をカチ上げたのはJUN SKY WALKER(S)だ。ビートも歌声も、すべてがスコーンと気持ち良く抜けるジュンスカ版カバー、痛快である。シアターブルックのエマーソン北村を招き(清志郎の愛車・オレンジ号の向こう側に鎮座)、ピアノとオルガンがフィーチャーされた“スローバラード”も染み渡る。宮田和弥(Vo)は、彼が高校生の頃に当時の野音の金網によじ登ってRCが行っていた“ブン・ブン・ブン”のリハーサルを観た(当然、警備員に追い出されたらしい)思い出を語りつつ、「日本の有名なロックンロール!」というセリフ付きの“上を向いて歩こう”孫カバーでは、勢いよくブルースハープも吹き鳴らしてゆくのだった。
こちらも『シングル・マン』から、陽が沈む時間帯の野音に嵌りまくる“甲州街道はもう秋なのさ”を繰り出すシアターブルック。聴けてよかった、としみじみするのも束の間、ただでさえ盤石のアンサンブルに梅津和時(Alto Sax)と片山広明(Tenor Sax)のブルー・デイ・ホーンズが迎えられ、“ドカドカうるさいR&Rバンド”の逃れがたい熱狂が育まれてしまった。佐藤タイジ(Vo・G)もスペシャルなセッションを仕切るべく、爆裂ソウルヴォーカルを放っては煽りまくる。
そこに加わるのはTOSHI-LOW(BRAHMAN)だ。あの、清志郎が2000年に音楽評論家・湯川れい子氏に宛てた「地震のあとには戦争がやってくる――」という書き出しの手紙を丸暗記で語り、タイジと歌詞をシェアしつつ“明日なき世界”を熱唱する。「2011年の4月だったかなあ、この裏の経産省に、電話しました。メルトダウン、してますよねって」。電話口の担当者をたらいまわしにされ、罵られながら、絶対にメルトダウンしていない、と電話を切られたそうだ。「あれ、あの人が歌ってたとおりになっちまったな。生きてたときは半信半疑だったけど、俺がいま信じてるのは偉い人じゃねえ。あんたのことだよ、清志郎」。現在進行形の反骨精神を託すように“アイ・シャル・ビー・リリースト”を歌い上げると、大喝采の中で立ち去るのだった。
「助け合っていきましょうよ。我々もたぶん一緒ですよ」。タイジがそう告げて、鳴り響くのは“激しい雨”の一節。そこに満を持して登場するのは仲井戸“CHABO”麗市だ。彼が繰り出すギターフレーズをバンドのスキルが支え、披露されるのは“あきれて物も言えない”。さらに、RCが渋谷・青い森に出演していた頃の1970年代、国立の自宅に帰ることを面倒くさがった清志郎がCHABO宅に押しかけることがよくあり、そんな夜に聴かせてくれた歌として“もっとおちついて”も届けられる。CHABOは、清志郎の多様な作詞について、かつてのインタヴュー記事を読み上げながら「究極的には、僕を愛して、ということに尽きる」と深みを感じさせる発言もしていた。
本編クライマックスに立ち上がるイントロは、まさかの“よォーこそ”だ。そこに、ギラッギラの衣装でマントも纏ったTOSHI-LOWが再登場して爆笑を巻き起こす。華々しい演奏の中でCHABOがひとしきりメンバーを紹介すると、最後にはTOSHI-LOWが「清志郎のコスプレしたら〜♪ オカマのプロレスラーみたいになっちまった〜♪ おいらトシロウ〜どうぞよろしく〜♪」と見事なオチをつける。CHABO直々の手紙によってフィナーレを任されたということで、「できねえけど、そう言われたらやるしかねえんだよ! さっき、みんなも清志郎の手紙受け取ったろ! やるしかねえんだよ!!」と叫ぶのだった。最高だ。
アンコールでは、梅津を伴ったCHABOが、野音のステージに立った清志郎の姿(当時の彼女・後の奥さんと大ゲンカしていてヘヴィなステージになった日のことや、生まれたばかりの長男・竜平くんをステージ上で抱き掲げたときのこと)を振り返る。そして恒例の、全員参加“雨あがりの夜空に”だ。タイジが「僭越ながら、この言葉を言わせて頂きます。OK!! CHABO!!」と声を上げた瞬間にテープキャノンが放たれ、和弥→タイジ→大知→曽我部→TOSHI-LOW、そしてCHABOとヴォーカルをリレーしてゆく。オーディエンスの歌声も最高潮の盛り上がりを見せ、ステージは大団円を迎えた。
最後の最後には、今回も清志郎のライブ映像。ステージに突っ伏して熱唱する、1986年野音の“ヒッピーに捧ぐ”が圧巻であった。人々の記憶と思い入れ、そして受け渡されたエネルギーの分だけ、清志郎の歌は生き続ける。僕は毎年、この季節の「ロックン・ロール・ショー」から帰路につくとき、寂しい心持ちになったことは、不思議と一度もない。(小池宏和)
●セットリスト
1.ガラクタ(黒猫チェルシー)
2.わかってもらえるさ(黒猫チェルシー)
3.ぼくの好きな先生(黒猫チェルシー)
4.君を呼んだのに (黒猫チェルシー)
5.多摩蘭坂(黒猫チェルシー)
6.ファンからの贈り物(サニーデイ・サービス)
7.大きな春子ちゃん(サニーデイ・サービス)
8.ヒッピーに捧ぐ(サニーデイ・サービス)
9.うわの空(サニーデイ・サービス)
10.ぼくの自転車のうしろに乗りなよ(サニーデイ・サービス)
11.ロックン・ロール・ショー(JUN SKY WALKER(S))
12.キモちE(JUN SKY WALKER(S))
13.スローバラード(JUN SKY WALKER(S) W/ エマーソン北村)
14.トランジスタ・ラジオ(JUN SKY WALKER(S))
15.上を向いて歩こう(JUN SKY WALKER(S))
16.甲州街道はもう秋なのさ(シアターブルック)
17.ドカドカうるさいR&Rバンド(シアターブルック with梅津和時/片山広明)
18.明日なき世界(シアターブルック with TOSHI-LOW/梅津和時/片山広明)
19.アイ・シャル・ビー・リリースト(シアターブルック with TOSHI-LOW/梅津和時/片山広明)
20.あきれて物も言えない(シアターブルック with 仲井戸麗市/梅津和時/片山広明)
21.もっとおちついて(シアターブルック with 仲井戸麗市)
22.よォーこそ(シアターブルック with 仲井戸麗市/TOSHI-LOW/梅津和時/片山広明)
(アンコール)
23.夜の散歩をしないかね(仲井戸麗市+梅津和時)
24.雨あがりの夜空に(全員)
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