マニック・ストリート・プリーチャーズ、21年前に失踪したリッチー・エドワーズを偲ぶ

  • マニック・ストリート・プリーチャーズ、21年前に失踪したリッチー・エドワーズを偲ぶ - pic by Alex Lake

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  • マニック・ストリート・プリーチャーズ、21年前に失踪したリッチー・エドワーズを偲ぶ - マニック・ストリート・プリーチャーズ『エヴリシング・マスト・ゴー』(20周年記念盤)5月25日(水)発売

    マニック・ストリート・プリーチャーズ『エヴリシング・マスト・ゴー』(20周年記念盤)5月25日(水)発売

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  • マニック・ストリート・プリーチャーズ、21年前に失踪したリッチー・エドワーズを偲ぶ - マニック・ストリート・プリーチャーズ『エヴリシング・マスト・ゴー』(20周年記念盤)5月25日(水)発売

悲しい旅立ちの作品となった『エヴリシング・マスト・ゴー』の20周年記念盤を5月25日にリリースするマニック・ストリート・プリーチャーズだが、ジェイムス・ディーン・ブラッドフィールドとニッキー・ワイアーはそれぞれにこの作品の成り立ちを語っている。

『エヴリシング・マスト・ゴー』はそれまでバンドの歌詞とバンドのエキセントリシズムの中核ともなっていたリッチー・エドワーズが失踪した後に制作された初の作品で、バンドが大きく体制を変えていかざるを得なくなった作品としてよく知られている。

バンドは1994年の問題作『ホーリー・バイブル』を経て、95年の初頭には次回作のデモ制作に臨んでいたというが、この時リッチーは『ホーリー・バイブル』で描いた闇をさらに追求したがっていたとジェイムスはザ・ガーディアン紙に語っている。しかし、二度続けるとそのイメージから逃れられなくなるかもしれないとほかのメンバーが反対し、前作が非常にテンションの高い作品だったため息抜きがしたいとほかのメンバーは意見したという。ただ、特に言い争いにはならなかったし、緊張感が生まれたわけではなかったとジェイムスは振り返っている。

「それから(スタジオのあったサリー州から)ロンドンまで俺とリッチーとで車で戻ったんだ。翌日にはふたりでアメリカ行きの便に乗るはずだったんだけど、そのまま行方がつかめなくなったんだ。最初の一月はなんか報せがあるに違いないと思ってるわけだよ。実は一番消耗するのは、こういう状況で希望を持ってしまうことなんだよね。けれども、やがて、決定的な決着などつきようのないなにかに放り込まれてしまったのかもしれないと気がついてくるんだ(リッチーは行方不明のままで現在推定死亡扱いとなっている)。3ヶ月経って、みんなで話したんだよ、『試しに、友達同士としてではなくて、メンバーとして一緒にバンドでの演奏をやってみて、リッチー抜きのダイナミズムがどんなものかみてみないか』ってね。そうやって"A Design for Life"みたいな曲が書けるとわかった時は本当に救われたよ。それだけが俺たちがその後も存在していける唯一の術だったんだ」

その一方でニッキーは次のように作品のテーマ性のきっかけについて語っている。

「ぼくはちょうどヴァリー(ウェールズのワッツヴィル近辺)にテラスつきの家を買ったばっかりで、その数年前に結婚したからね。それでアンチ・ロックンロール的なことがなんかできないかって考えてたんだよ。ブリット賞で2部門受賞した時の授賞式で、ぼくは『ぼくは掃除機をかけるの大好き』っていうTシャツを着てたんだ。これは明らかにブリットポップでのワーキング・クラスへの描かれ方(ワーキング・クラスはおしなべて身持ちが悪く酔っ払ってばかりでおよそ家庭のことなど振り返らないなどといったイメージ)への怒りがあってのことだったんだ。『パークライフ』以降、ワーキング・クラスとはドッグレースをネタにしたコックニー訛りのバカ騒ぎになったわけで、まったく接点を見いだせなくなったんだよ。

今ではなおさらひどくなってると思うけど。今ほど、人がカルチャーと呼ぶものに自分から関わり合いたくない時代はないと思うよ。自分の家族を除いて、ぼくには人生で大好きなものが3つあって、それは音楽と政治とスポーツだったんだけど、今でも好きなものはスポーツだけだよ。音楽はもはやありきたりさとデジタル化された偽りの巨大なブランドと成り果てただけなんだ。人は運動や活動に参加するのはためらわないけど、実際のアートにそうした気持ちをもう込めようともしない。それでも、ぼくたちの"If You Tolerate This Your Children Will Be Next"っていう、スペイン内乱について歌った曲は6か国でチャート1位になったんだよね。あるいは"A Design for Life"みたいな曲がヒットするなんてことは今じゃありえないよね」

さらにニッキーはリッチーについて次のように語っている。

「ぼくたちはいつでもものすごい人気を誇りたかった。何度かやった大規模なライヴにもリッチーがいてくれたらなあって思うよ。そのことがなによりも悲しいんだ。でも、何曲かの歌詞でリッチーもこのアルバムに加わってて嬉しいよ。"Small Black Flowers That Grow In The Sky"とか。1万人くらいの観客の前でこの曲をやってても、カップルが曲に合わせて身体を横に振ってるんだよね。『子宮をもぎとられ/母の機能が死んだ生き物が這い歩く』っていう歌詞にね("Small Black Flowers That Grow In The Sky"は動物園という監禁状況で発狂していく虎のことを歌っていて、このくだりは避妊手術について触れている)。こんなおぞましい歌詞がロックの歴史でほかにある?」
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