SiM vs Crossfaithによる「Red Bull Air Race CHIBA 2016」テーマ曲のシングル『GET iT OUT』、東京スカパラダイスオーケストラ feat. Ken Yokoyamaによるシングル『道なき道の、反骨の。』、THE BAWDIES×go!go!vanillasによるスプリットシングル『Rockin’Zombies』と、シーンの第一線で活躍するアーティストたちがコラボレーションし、リリースを行うというニュースを最近よく目にする。特定のアーティストのファンにとっても、さまざまなアーティストの作品に触れるリスナーにとっても、新鮮な刺激を味わう機会と言えるだろう。
スカパラは十八番のゲストボーカリストを招くスタイルで、毎回ゲストにぴったりな楽曲を用意するという理解の深さにも驚かされるが、2013年から2014年にかけては合体バンドというトライアルによって成果を残してきた。THE BAWDIESとgo!go!vanillasのシングルは、演奏の共演こそ行っていないものの、それぞれの新曲に加えお互いのカバー曲を収録するというアイデアで、やはり各バンドがコラボ相手への理解を示しながら自分たちの個性を浮き立たせている。コラボレーションにおいて、相手を理解しようと努めることは無論重要なことである。
しかし、そもそもバンド同士というのは「混ざりにくい」ものだ。多様な環境にその都度適応することを求められるセッションミュージシャンとは違い、バンドマンはバンド単位の個性を、つまりバンド独自の呼吸やムードや世界観を追求することの方が多い。それによって、シーンの中で一歩抜きん出ることを目指すものだからだ。カバー曲ひとつにしても、いわゆる完コピと同等かそれ以上に、カバーする側の個性が見えてくる方が面白い。もちろん、バンドマンにして一流のセッションミュージシャンというケースはあるけれど(スカパラの面々はもろにそうだろう)、バンド同士のコラボレーションというのは、超難易度のパズルのように、ギリギリのせめぎ合いの中でしか大きな成果を残せないものだと思うのだ。
そこで、SiM vs Crossfaithによる合作曲“GET iT OUT”である。名義の中の接続詞は「&」でも「featuring」でもない「vs」。両者は最初から、綺麗に混ざり合うイメージではなく、戦うイメージでコラボに臨んでいるのだ。SiMのSHOW-HATEは個性豊かな鍵盤プレイを奏でることがあるが、レイヴ感豊かなけたたましいシンセサウンドは明らかにCrossfaithのTeruによるものだろう。出し惜しみなしの音の交錯の中から、《get it out, show yourself get it out (ハッキリ言えよ、本性を現せ)》という叫びのリフレインが響いてくる。まさに、エクストリームな航空機競技のテーマ曲にもピッタリと言えるナンバーだ。
ロックはスポーツではないし、爽やかどころではない凶悪な音を鳴らしたりもするけれど、気の合う仲間との運命的な出会いに恵まれることと同じくらい、全身全霊をかけて感情と技術とをぶつけあうことができるライバルに恵まれることは幸福だ。アーティストたちは、ときに一曲の音楽を通じて、そんなことを教えてくれたりもする。(小池宏和)