レッド・ツェッペリン、"天国への階段"の盗作訴訟で勝訴。被告のペイジとプラントも出廷


レッド・ツェッペリンの"天国への階段"が盗作だと訴えられている訴訟で、陪審による判決で盗作ではないと認められ、ツェッペリン側が勝訴を勝ち取っている。

訴えを起こしていたのはスピリットというバンドのギタリストの故ランディ・カリフォルニアことランディ・ウルフの遺産管財人のフランシス・マロフィー。マロフィーは1971年に発表された"天国への階段"のイントロとなるアコースティック・ギターによるアルペジオ演奏が、実は68年に発表されたスピリットのファースト・アルバム中の"Taurus"の中盤で登場する楽器演奏を盗用したものだと訴えていた。両バンドは69年にフェスティヴァルで2度共演していて、さらにスピリットがツェッペリンの前座を務めたこともあることから、スピリットの楽曲盗用をジミー・ペイジが行ったのではないかと裁判では争われていた。

4月にゲイリー・クラウスナー判事は自身が判決を下すよりは陪審団が協議して判断する方が適当だとして結審がロサンゼルスの連邦裁判所で行われていたが、法廷には"天国への階段"の作曲者であるジミー・ペイジとロバート・プラントも出廷していた。

スピリット側のマロフィーはツェッペリンが"胸いっぱいの愛を"などかつてのブルース・ミュージシャンの作品からの盗用を何度となく行っていたことを指摘し、"天国への階段"を書いた時点でスピリットの"Taurus"を聴いていたはずだと訴えてきた。

その一方でジミーとロバートは"天国への階段"はふたりが作曲の合宿を行ったウェールズのブロンアーアイアのコテージで思いついたものだと説明し、さらに4枚目のアルバムのレコーディングを行ったヘッドリィ・グレインジで本格的に書いたものだと説明した。

ロバートはウェールズの民俗伝承や風景を思わせる歌詞を思いついていて、ちょうどジミーが弾いているものとうまく合うのではないかと思ったと振り返ったが、その歌詞はどういうものだったかという、ツェッペリン側の弁護士のポール・アンダーソンの問いかけにロバートは「まばゆくものはすべて金だと信じる女がいて/彼女は天国への階段を買おうとしている」と曲の冒頭の歌詞を鼻歌交じりに法廷で説明したという。

さらにスピリットの"Taurus"については「当時もそんな曲は憶えてなかったし、今も憶えてません」とまったく影響を受けていないとロバートは証言した。

スピリット側のマロフィーはもともとセッション・ミュージシャンのグループであったツェッペリンはフェスティヴァルで共演したことのあるスピリットの楽曲も平気で盗用したはずだと指摘し、これに対してジミーは確かにライブでスピリットの"Fresh Garbage"という曲を披露したことはあると認め、それはその時々で流行っているものを洒落で披露するのは当たり前のことだからだと説明した。

ただし、"Taurus"のことは一切知らなかったとジミーは証言。その一方で、この曲が収録されていたスピリットのファーストが自宅のレコード・コレクションにあったことは認めているが、一度も聴いたことがなかったとジミーは説明している。ジミーの自宅にはアナログ・レコード4329枚とCD5882枚があるというが、このアルバムも曲についてもまるで知らなかったのを義理の息子から世間で話題になっていることを教えてもらい、ジミー自身は一切ネットをやらないので息子にネットで聴かせてもらったという。

「ぼくはインターネットをやらないので娘の夫に再生してもらったのです。冒頭のオーケストラの演奏を聴いた時、この曲のことは知らないとはっきりわかりました」とジミーは証言した。ちなみに"Taurus"は長いインストゥルメンタル曲で、中盤のごく一瞬に問題のパートが登場する。

なお、今回はジミーとロバートが作曲者として訴えられたため被告となったが、ジョン・ポール・ジョーンズも証言を提供し、"天国への階段"と"Taurus"の関係性を否定した。

さらに音楽研究者らも証言を行い、どちらの曲も問題のパートで使われているコード進行は数百年にわたって使われてきているものだと法廷で説明し、ツェッペリン側のアンダーソン弁護士はこれを盗作だとするにはスピリットがAマイナーというコードを発明し、その著作権を所有していなければならないと抗弁していた。

最終的に陪審団は、"Taurus"についての著作権はランディ・カリフォルニアことランディ・ウルフについて認め、ジミーとロバートが"天国への階段"を書く前に"Taurus"を聴いていた可能性についてもあると認めたが、"Taurus"の楽曲としてのオリジナリティが"天国への階段"と類似しているかどうかという点についてはそうとはいえないと判断した。

判決の後、ジミーとロバートは次のように声明を発表している。

「陪審団の誠実な働きに感謝し、その判断がぼくたちに味方してくれたことを満足していますし、これで"天国への階段"の起源についての疑いにも終止符を打てたことだと思うと同時に、ぼくたちが45年知ってきたことをあらためて確認できたことだと思います。ファンのみなさんの応援にも感謝したいですし、これでこの訴えについては過去のものとしたいと願います」