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    【コラム】UNISON SQUARE GARDEN、「ふたつの情熱」を極め、『Dr.Izzy』はこうして最強のアルバムになった

    【コラム】UNISON SQUARE GARDEN、「ふたつの情熱」を極め、『Dr.Izzy』はこうして最強のアルバムになった

    UNISON SQUARE GARDENの音楽にはいつだって、高密度のポップとロックが共存している――ということについて、今さら異論のある方はいないだろう。だが、そのポップとロックがどういう位置関係でその音楽内に存在しているのか?というと、その見解は分かれるはずだ。

    カラフルに咲き乱れる「ポップ」な輝度に満ちたメロディと、スリリングな疾走感を備えた「ロック」な楽曲のコントラスト。あるいは、斎藤宏介の「ポップ」なボーカルスタイルと、触ると切れそうなくらいにエッジが立ちまくった「ロック」なバンドアンサンブルとのせめぎ合い……といった具合に、彼らの音楽をひもとく中でポップとロックの構図をいくつも見出すことができる。

    そして、それらのポップとロックの対比は、根源的にはたったひとつの対立軸に収束していく――という見方もできる。それはすなわち、「自分(たち)のことをみんなにわかってほしい」という想いと「自分(たち)のことがそう簡単にわかってたまるか」という反骨心だ。

    ユニゾンはそのデビュー当初から、それこそ“オリオンをなぞる”や“kid,I like quartet”をはじめとするタイアップ曲群においても、自身の楽曲が「みんなのうた」として時代に囚われることを拒むような闘争精神を忍ばせてきた。「わかってほしい」と「わかってたまるか」の間で生まれる軋みそのものが、彼らの音楽におけるポップとロックの極上のミステリーを生んできた、ということだ。

    しかし、彼らが新たに完成させた6thアルバム『Dr.Izzy』は、どこから聴いてもユニゾンの音楽でありながら、そのサウンドスケープの視界は、これまでのアルバムとは明らかに異なるものだ。

    プログレ的な変拍子も登場する複雑怪奇な曲展開と、《少々野暮ったいけど 粛々とナイフを尖らせてたいね》とロックバンドとしての決意を滲ませる歌詞越しに、途方もない高揚感を描き出す“エアリアルエイリアン”で幕を開ける今作。
    さらに、パンキッシュな激走ビートを躍動感あふれるメロディで軽快に乗りこなしてみせる“アトラクションがはじまる(they call it “NO.6”)”、超絶フュージョンバンドの如きタイト&高精度な演奏とともに極彩色のロックを振り撒く“シュガーソングとビターステップ”……といった具合に、息つく間もないほどのジェットコースター的な音の絶景を、ラストの“Cheap Cheap Endroll”まで全12曲にわたって描き出している。

    ここでの彼らは、過去最高に獰猛でありつつ、同時に過去最高に突き抜けた開放感に満ちている。紛れもないロックバンドとして時代に向き合いながら、その歌とサウンドでポップシーンに闘いを挑み続ける――これまで彼らが掲げてきたユニゾンの基本精神を、3人が完全に対象化し血肉化した、ということだろう。
    「わかってほしい」と「わかってたまるか」というふたつの情熱が、矛盾も二律背反もなく、どっち方向にでも弾を撃てるという最強モードへと鮮やかにネガポジ反転されているのである。

    「ロックと思えばポップに見え、ポップと思えばロックに見える」というこれまでのギリギリのバランス感をも自らの手で打ち砕き、制御不能に極限炸裂するポップとロックを改めて自分たちの音楽のパースの中に収めてみせたユニゾン。唯一無二のバンドがついに新しい扉を開け放った――という実感を、この『Dr.Izzy』というアルバムは確かに与えてくれるはずだ。(高橋智樹)
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