【コラム】ASIAN KUNG-FU GENERATIONの新たな黄金律を見た! 新曲“ブラッドサーキュレーター”について

【コラム】ASIAN KUNG-FU GENERATIONの新たな黄金律を見た! 新曲“ブラッドサーキュレーター”について

明らかに「『Wonder Future』を血肉化した“今”のモードだからこそ叩き出せる、ラフで自然体なロックンロール」の開放感。と同時に、「『Wonder Future』の“その先”を示す一歩」的な思索や気負いとはまるっきり別次元の、剝き身の衝動の在り処をまっすぐに指し示すような無垢なダイナミズム――。

7月13日リリースのASIAN KUNG-FU GENERATIONニューシングル『ブラッドサーキュレーター』。ご存知の通り今回の表題曲“ブラッドサーキュレーター”は、“遥か彼方”“それでは、また明日”に続いてアジカン×『NARUTO』の3度目のタッグが実現した曲でもある。

熱くドライブするコードワークと、どこかエスニックさすら漂うペンタトニックのリフが絡み合い疾駆するイントロ。
冷徹な視線で意気揚々とこの時代を闊歩するようなAメロ〜Bメロの躍動感。
そして、灼熱のビートとアンサンブルに乗せて突き上げる、《情熱 燃やしたあの頃を/心血注いで取り戻すんだ/縁で繋がれば この日々も/捨てるほど壊れてないだろう》という凛とした歌……。
それらが織り重なって立ち昇らせるのは、誰もが思い描く「アジカン黄金律」的なエモーショナルな突破力に満ちたギターロックのフォルムそのものだ。

だが、その「アジカン黄金律」そのものが、長い時間をかけてアジカン自身が着実に研ぎ澄まし進化させてきた結果のものだ――ということを、“ブラッドサーキュレーター”は確かに物語っている。

たとえば初期曲“遥か彼方”。ライブを通して格段にブラッシュアップされた近年の印象がすっかり脳内に定着しているし、「誰もが思い描くアジカン」のひとつの象徴的な楽曲でもあるだろう。
だが、当時のインディーズ時代の音源を聴き返してみると、ゴッチの歌は熱唱というかほとんど絶叫と呼ぶべきテンションだし、バンドサウンドもナイフの刃の上でバランスを取るような切迫感に満ちていることがわかる。衝動に身を焦がしながらがむしゃらにロックを響かせる姿は、今の僕らが思い描く「アジカン黄金律」像――あふれ返る衝動すらも対象化して楽曲に有機的に昇華する現在の在り方とは、明確に一線を画していると感じるはずだ。

アジカンは自らの音楽を磨き続けることで、僕らリスナーを1曲また1曲とロックの覚醒の旅へ導いてきた。そして今、“ブラッドサーキュレーター”が描き出す視界は、格段にクリアで、揺るぎない。
僕らの心を捉えて放さない「アジカン黄金律」は、実はずっとずっと革新を続けてきたのである。

『去年の秋に、僕らはヨーロッパと中南米までコンサートツアーに出かけました。「遥か彼方」という楽曲が巻き起こす熱狂をとても誇らしく思いました。この曲が用意してくれた扉を開いて、辿り着いた風景でもありました。

正直に告白すれば、曲もアイデアも時間もまったくないところにオファーが来たんですね。でも、断る理由が見当たりませんでした。寝る間を惜しんでも、この曲は書き上げないといけないと思いました。そうすることで、またきっと新しい旅の扉が開くのだという直感もありました。(後略)』

『NARUTO』制作陣からオープニングテーマ曲の依頼を受けた際の心境について、ゴッチは上記のようにコメントしていた。そんな瞬発力が求められる状況だったからこそ、“ブラッドサーキュレーター”には今の彼自身の核がごろっと露わに結実している、と見ることもできる。
そして、それがまた新たな「アジカン黄金律」のデフォルトとなって、ここからさらに前進していく……そんな無限のサイクルをも予感させる楽曲が、結成20周年を迎えたこの2016年にまた新しく生まれた、ということだ。

『Right Now』、『Re:Re:』、さらに今回の『ブラッドサーキュレーター』、と立て続けにシングルをドロップしている、結成20周年イヤーのアジカン。自分たちの足跡も、今を生きる僕らの感情も全部抱えて「その先」へ牽引していくようなタフな生命力が、今のアジカンには宿っている――ということを、このシングルは確かに伝えてくれるはずだ。(高橋智樹)
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