『関ジャム』ついにアニソンの世界までも徹底解剖。「89秒の秘密」、『ラブライブ!』の奇跡など

今月7日に放送されたテレビ朝日『関ジャム 完全燃SHOW』では、「実はスゴいアニソンの世界特集」が放送された。トークのゲストに招かれたのは、アニプレックスのプロデューサー・山内真治、作曲家・神前暁、評論家・冨田明宏というアニソン業界のプロ。そしてアニメファンの宮田俊哉(Kis-My-Ft2)、声優ファンの女優・志田未来、アニメにあまり詳しくないという濱口優(よゐこ)。3つのカテゴリに分けて「そもそもアニメ音楽って?」という部分を説明しながら、昨今のアニソン人気の背景を考察した。

番組中には例えば、制作陣がこだわりを見せた学園祭演奏シーンが話題を呼んだ『涼宮ハルヒの憂鬱』や、バンド活動をする女子高生たちが主人公の『けいおん!』を「アニソン史の革命的作品」として取り上げつつ、スマホの音楽ゲームをキッカケに幅広い層に波及した『ラブライブ!』シリーズ(宮田は「あれこそアイドルの在るべき姿」と熱弁)、さらに最近話題の『けものフレンズ』にも言及。そんな中で最も興味深かったのはやはり、「J-POPにないヒットの鉄板法則」として挙げられていた「主題歌の長さが89秒」ということだろう(※ここで言う「長さ」とは「TVサイズでは」という注釈付きである)。「1話につき30分」という放送枠の関係上、オープニングテーマ・エンディングテーマがオンエアされるのはそれぞれ89秒という限られた時間。その中で如何にして聴き手を惹きつけるようなフックを用意するのか。そんな試行錯誤と創意工夫の結果、サビで盛り上げるための鉄板のコード進行が生まれたり、あの手この手を駆使するように多展開をする曲が生まれていったりして、アニソンは独自の進化を遂げていったという。

その進化にはもちろん、2000年代以降のテクノロジーの発展に伴うアニメ/音楽の制作・視聴環境の変化が大きく関係している。しかし、先に挙げた『ハルヒ』が「たった1話の劇中歌のために、あれほど手間のかかったコンテンツが製作されるなんて」という点で私たちに衝撃を与えたことが象徴するように、結局は「決められた制約の中でどのように情熱を注ぎ込むか」という話であり、そういうところでプロのクリエイター/ミュージシャンが見せる仕事の質の高さが多くの人を惹きつけてきたわけだ。難易度の高い曲をカラオケで歌いあげることによって達成感を覚える若者から、趣味として動画サイトにアニソンの「弾いてみた」をアップしているHISASHI(GLAY)まで、様々な人々がアニソンが魅せられた理由はきっとそういうところにある。

そしてこの日のジャムセッションで届けられたのは、「現代のアニソンならではの仕掛けがいっぱいある」「カッコいいアニソンの完成形」と評されたLiSAの“oath sign”(『Fate/Zero』オープニングテーマ)。関ジャニ∞・錦戸亮(G)が「(リズムの)食うタイミングが多い」、大倉忠義(Dr)が「独特なキメがある」とプレイヤー目線からその難易度を語っていた同曲のセッションでは、互いにアイコンタクトし、キメのタイミングを合わせるため、バンドがLiSAを囲むような配置で演奏が行われた。

アニソンはもはや単に「アニメの世界観に寄り添うこと」を目的とした音楽として存在しているわけではなく、40年以上の歴史の中で構築されてきた「鉄板法則」的な知識と、その上でさらなる進化を目指そうとする最先端のクリエイティビティ——つまり伝統と革新が掛け合わさる場としての役割を担っている。メディアミックス形式で盛り上がりを見せる作品も多いこのブームは様々な観点から語ることができるが、これまで扱ってきたテーマ同様あくまで音楽的観点に絞り、クリエイター/ミュージシャンへのリスペクトをもとにその魅力を丁寧にひもといたこの日の放送からは、『関ジャム』の揺るぎない姿勢を改めて読み取ることができたのだった。個人的には“もってけ!セーラーふく”(『らき☆すた』)が「ファンクやテクノを盛り込んだ超早口ラップ」と紹介されていたことにニヤリとさせられました。(蜂須賀ちなみ)
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