【心も満腹】宇宙まお、「まんパク」フリーミニライブを見た!

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宇宙まおの楽曲に触れていると、音楽とは時間のアートなのだということを、強く認識させられることがよくある。つい先日も、そんな機会があった。先月28日、巨大フードイベント「まんパク」で行われたミニライブでのことだ。その日僕は、府中の東京競馬場でダービーを観戦したあとに「まんパク」に遊びにいく、という休日を過ごしていた。あたかも競馬で勝ったかのように(しっかり負けたけど)フードメニューを並べ、舌鼓を打っているところに、サウンドチェックで“今夜はブギー・バック”をカバーする歌声が聴こえてきた。

宇宙まおが「まんパク」でミニライブを行うのは、今年で4年目だ。「まんパク」テーマソングの“夢みる二人”を提供した2015年には、開催期間中に一日3回、19日間連続という耐久レースのようなミニライブを行い、ずいぶん鍛えられたと後に語ったりもしていた。必ずしも音楽を目当てに来たわけではないお客さんと向き合うのだから、それは貴重な経験だろう。この4月にリリースされたニューアルバム『ベッド・シッティング・ルーム』は本間昭光による彩り豊かなアレンジが施された作品だったけれども、今回のライブでは3ピースのシンプルな編成で、人々がくつろぎ楽しむ時間を阻害することなく、会場の空気に音楽を馴染ませるようにスタートした。

新作曲を中心にしたパフォーマンスは、陽性ファンキーな“ヘアカラー”や、なんでもない時間を慈しむ美曲“Home”など新作曲を中心に進み、ステージ前にはみるみるうちにお客さんが集まってくる。“夢みる二人”の賑々しいコールもばっちり決まって、アンコールではちびっ子たちと一緒に「まんパク」公式キャラクターのぼぅくんを呼び込む、といった具合だ。自然体のまま、ライブ空間を盛り上げてゆく手捌きは見事というより他になかった。


白眉だったのは、やはり “ベッド・シッティング・ルーム”だろう。音源ではストリングスアレンジなども施されたナンバーだが、今回のパフォーマンスではメロディの芯の強さが剥き出しになり、そこから立ち上る「一人きりの時間」の価値が人々に共有されてゆく。ゆったりしたテンポの、決して陽気なわけでもない曲なのに、最後には歌声が分かち合われてしまうのである。美しい夕焼けの情景も完璧にはまって、感動的であった。

宇宙まおの作品には、こんなふうに孤独な思考の時間を鮮やかに再現してしまう楽曲が、いくつかある。例えば、ミニアルバム『ワンダーポップ』に収録された“夜よ”。或いは、シングル曲でありアルバム『ロックンロール・ファンタジー』にも収録された“哀しみの帆”。彼女は、孤独をただ痛みや悲しみに通ずるものとして描くのではなく、価値ある体験として記録しているのだ。音楽も食事も仕事も恋愛も、あらゆる体験は個人の感覚しだいで価値が大きく変わってくる。孤独な時間や、なんでもない平易な時間にも価値を見出そうとするメロディや言葉を紡ぐから、宇宙まおの音楽は魔法のような共有体験に成り得るのである。

ミニライブ終演直後のステージ脇で行われたサイン会に、ちびっ子たちの走り寄ってくる光景が、彼女の音楽の力を物語っていたように思えた。新作を携えたワンマンツアー「ベッド・シッティング・ルームへようこそ」(大阪6/10、名古屋6/11、東京6/15)は間もなく開催。音楽の共有体験の根底に流れる孤独な時間を、ぜひ確かめてみて欲しい。(小池宏和)
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