【『カルテット』四夜連続自由研究①】神ドラマを彩った14の音楽

7月7日(金)にいよいよブルーレイ/DVDがリリースされる、今年1月期に放送されて大きな話題を読んだTVドラマ『カルテット』。細部のディテールまで伏線や仕掛けが散りばめられた脚本と、松たか子/満島ひかり/高橋一生/松田龍平が演じるカルテットドーナツホールの4人をはじめとする登場人物たちの魅力が破格の、まさに10年に1度の神ドラマと呼ぶに相応しい作品であり、見落としていた細部の発見がないかも含めて、これからパッケージでじっくり楽しもうと思っている人がたくさんいるはず。ということでrockinon.comは、4夜連続でこの『カルテット』を形成した、このドラマならではの要素を以下の4つのカテゴリーに分けて研究していきます。

① 『カルテット』を彩った14の音楽
② 『カルテット』を彩った12のおやつ
③ 『カルテット』を彩った5つの遊び
④ 『カルテット』を彩った20のごはん


まず1夜目の今夜は、『カルテット』と言えばやはり「音楽」。どんな楽曲が、どんな場面で、どんな効果をもたらしながら登場したのかを研究。

《第1話》
カサド“無伴奏チェロのための組曲”
物語の始まり、世吹すずめ(満島ひかり)が繁華街の片隅でチェロを取り出して、路上で弾き始めるのがこの曲。その後のエピソードでもすずめのテーマ曲のような意味合いで登場。

「序曲」(ドラゴンクエストより)
巻真紀(松たか子)、すずめ、家森諭高(高橋一生)、別府司(松田龍平)の4人が別荘で初めて音を合わせたのがこの曲。このパーティで、4人がどんなRPGを繰り広げようとしているのかは、まだこのときは誰にもわからないのだった。はー、みぞみぞする。

杉山清貴&オメガトライブ“ふたりの夏物語”
家森を追う謎の男・半田温志(Mummy-D)は、なぜかいつもこの1985年のヒット曲を聴いている。

《第2話》
X JAPAN“紅”
別府が、思いを寄せ合いながらもカラオケ友達止まりの同僚・九條結衣(菊地亜希子)に勝手にリモコン入力されて歌わされるのがこの曲。お皿を重ねるときの皿枠をコルセット代わりに首にはめられる別府くん、可愛い。そして失恋後の別府は、カラオケボックスで「紅だー!」と叫んで絶唱。《紅に染まったこの俺を慰める奴はもういない》と歌う別府をXジャンプ(それは、この曲じゃない!)で慰めるのは真紀、すずめ、家森。そしてヘドバンは体によくないらしいので気をつけましょう。

シューベルト“アヴェ・マリア”
大学時代の別府が学園祭で、宇宙人コスプレのまま偶然、真紀と出会ったときに彼女がバイオリンで弾いていたのがこの曲。

SPEED”White Love”
九條がいつもカラオケで歌っていた曲。《果てしない 星の光のように/胸いっぱいの愛で/今あなたを 包みたい/天使がくれた 出逢いは/あの空を 突き抜けて》。“紅”とは、いろいろな意味で好対照なこの曲を、九條の結婚式に演奏者として参加した別府は、新郎新婦の退場のときにいきなり弾き始める。一瞬、立ち止まるけれど再び歩いて退場していく九條。映画『卒業』のダスティン・ホフマンのようにはいかない展開はこれまでもいろいろな作品で描かれてきたけれど、これは群を抜いて繊細で切ない名シーン。

《第4話》
“フレール・ジャック”
家森と、離婚した妻と暮らす息子の光大くんを繋ぐ曲。フランス民謡。

《第6話》
マスカーニ“カヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲”
真紀が夫となる幹夫(宮藤官九郎)と初めて食事をしたときに好きだと語った曲で、幹夫はこの曲が好きな真紀が好きだった。だからこそ幹夫が失踪してしまう夜にラジオから流れていたこの曲は、とても切ない。

《第7話》
ジョニ・ミッチェル“青春の光と影”
すずめが、幹夫と共に家に帰ろうとする真紀を引き止められなかったことを思い出しながらチェロで弾く曲。すずめは、真紀に耳元でこう囁かれて引き止めるのをやめた。「抱かれたいの」

《第8話》
フランツ・リスト“慰め”
すずめは職場でもらったフランツ・リストを演奏するピアノコンサートのチケットを「好きな人と好きな人に行ってほしい」と真紀と別府に譲る。そのコンサートの時間に残業をしながら、すずめはPCでこの曲を聴きながら眠ってしまうのだが、その時に彼女が見た夢が本当に切ないのだった。

《第9話》
山本みずえ“上り坂 下り坂 ま坂”
真紀の母親は演歌歌手で、これは彼女の持ち歌。あまりにもネタバレなので詳細は書きませんが、とにかく人生は《まさか》なんですよ。

スメタナ“モルダウ(わが祖国より)”
カルテットドーナツホールの4人が、ライブレストラン「ノクターン」で演奏する1曲目に選んだ曲であり、真紀が警察に同行する前に4人が演奏した曲でもある。

《第10話》
“Music For A Found Harmonium”
カルテットドーナツホールが劇中で最も頻繁に演奏する、4人の絆を感じさせるような曲。この曲を演奏する最大の名シーンは、団地のどこかにいる真紀をおびき出すかのように、3人が路上でこの曲を演奏するシーン。
真紀「何してるんですか?」
家森「あ、ちょっとそこまで来たんで」
真紀「演奏イマイチだったなあ」
別府「第一ヴァイオリンがいないんで」
真紀「こんな下手なカルテット見たことない」
すずめ「じゃあ、あなたが弾いてみたら?」

シューベルト“死と乙女”
「いつか大きなステージで、大きなホールで演奏したい」という夢を、真紀の提案による突拍子もない方法で実現させるカルテットドーナツホール。そのコンサートで演奏する曲として真紀は、この死神が登場する曲を選んだ。
すずめ「何でこの曲を選んだの?」
真紀「こぼれたのかな」
すずめ「……」
真紀「内緒ね」
客席を、怒る観客と、拍手する観客に二分する演奏。
秘めた罪と本当の気持ちを背負って、人はそんな演奏をしながら夢を叶えていくしかない、『カルテット』はそんなことを語りかけるドラマだったのだと思う。

(古河晋)
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