10月8日に放送された『関ジャム 完全燃SHOW』の「関ジャム音楽史~ヴィジュアル系編~」は、かなり秀逸な特集だった。ヴィジュアル系への批評眼をエンターテインメントに昇華したゴールデンボンバーの鬼龍院翔と、ヴィジュアル系に軸足を置いているだけではなくタレントとしての話術に長けたBREAKERZのDAIGO、そして音楽的にひもとく役割としてシドのマオとShinjiというゲストの人選も絶妙。さらに、ヴィジュアル系を「80年代=創成期」、「90年代=黄金期(前半・後半)」、「00年代=ネオヴィジュアル期」、「10年代=戦国期」と位置付けた分類もわかりやすかった。
番組は「ヴィジュアル系の元祖」としてX JAPANやBUCK-TICKを紹介するところからはじまったのだが、「いやいや、遡ればDEAD ENDもいるでしょ」とか「東のX、西のCOLORって言われてたでしょ」という突っ込みにも応えるように、他の重要バンドも紹介。これらのバンドの楽曲を流したうえでキリショーが発言した、「ヴィジュアル系は音楽ジャンルではなく文化的要素が強い」という言葉は、かなり説得力があった。さらに、「ヴィジュアル系」という言葉そのものが生まれたきっかけといった「入口」から、存在のインパクトが語られる機会が多いXの音楽的な醍醐味(マオが語った「バラードのDメロのすごさ」など)といった「深いところ」まで解説していた流れもよかったと思う。
そしてヴィジュアル系の黄金期に関しては、LUNA SEA、黒夢、GLAYの3バンドをフィーチャー。まず黒夢に「名古屋系」というコピーが付けられていたところに、彼らの初期に対する思い入れが感じられた(正確には黒夢は岐阜出身なのだが、90年代前半に「名古屋系」と呼ばれる、中京圏出身のインディーズバンド勢が起こしたムーヴメントがあったのだ)。そして黒夢の歌詞の解析や、Shinjiによる「LUNA SEAっぽいギター奏法」からは、音楽的な特色も見えてきた。
そして、ヴィジュアル系が90年代後半にテレビ番組『Break Out』をきっかけにお茶の間へ浸透していった結果、00年代には「ソフトヴィジュアル系」と呼ばれるほどナチュラルになっていった流れも紹介。さらに「日本の文化」としてアニソンで海外進出していった流れも紹介し、キリショーの冒頭の発言への説得力を増させることとなった。また、この時期の紹介にはDIR EN GREYも登場していたのだが、過激さだけではなく(アニソンとは別ルートの)海外進出の経緯も紹介していたところからは、彼らのオンリーワンな特異性が感じられてよかったと思う。
最後に、新世代のヴィジュアル系バンドも紹介。今のヴィジュアル系に対してキリショーは「もう何だか分からない……」と評していたのだが、何でもありの先陣を切ったのはゴールデンボンバーだろ!と誰もが突っ込んだとは思いつつ、紹介されたバンドのバラエティに富んだコンセプトを見るに、この言葉は本当にぴったりだったと思う。そして、LUNA SEAの“I for You”を迫力のトリプルボーカルでジャムセッションして、番組は締め括られた。
その創成期から20年以上を経ても、未だに「ヴィジュアル系って何ぞや?」と言われがちなジャンル。しかし、一括りに特集されることで、一括りにはできないほど個性的なバンドが多いことが明らかになったのではないだろうか。こういった番組をきっかけに、その面白味がもっともっと伝わっていってほしい。(高橋美穂)
『関ジャム音楽史~ヴィジュアル系編~』が教えてくれた謎のジャンル「ヴィジュアル系」の深み
2017.10.11 12:10