今回のMVは、メンバーの笑顔が話題になった表題曲とはガラッと変わり、欅坂46の本領とも言えるシリアスな空気と緊張感が漂っている。
降りた遮断器のように心を閉ざし暗い目をした「君」、そんな君に降りかかる世の中の悪意から「僕」が「避雷針」となって君を守る。といった内容であるこの楽曲に寄り添うように、荒れた山に独りでいる平手と、そんな平手を探すように山中を団体になって歩き周るメンバーの対比で映像は進んでいく。途中、平手が憂鬱そうに頭を抱える姿や、メンバーによる少し風変わりでピタリと動きの合ったダンス(まさに壁や盾を表しているような)が差し込まれ、最後には平手とメンバーとが合流し、泥水に膝をついてしぶきを飛ばしながら踊る。
このMVを一見して、いつか小さい劇場で観た前衛演劇を思い出してしまった。1つ1つの動きに深い意味があるのかもしれないが、その意味を頭でひもとくよりも先に、ストーリー(曲)とともに感覚部分が刺激される。たしかに、孤独に立つ平手の眼差しには、誰もが思わず気になってしまうほどの凄みがある。だからこそ起こってしまう批判という雷。しかしそれに引っ張られることなく、それぞれが持ち前のキャラクターのままでグループとしての団結性を保つメンバー。欅坂46はそんな要素だからこそ成り立っているし、この曲を聴くと改めて不思議なバランスのグループだと思う。
「アイドルは夢を与えるもの」と昔からよく言われてきたが、欅坂46がこの曲で表現しているのは、平手含むグループ全体が見ている「リアル」だ。現実の世界は晴れの日だけではなく、激しい雨も雷だって起こる。危うさや儚さもあるけれど、きっとそこに「避雷針」が存在する限り、雷が落ちてバラバラになってしまうなんてことはない、今回のMVを観てそんな確信さえ湧いた。(渡邉満理奈)