『3月のライオン』アニメ第2シリーズで描かれる本当の「強さ」と「幸せ」について

ひなたは、自分のやったことは間違っていないと、後悔なんてしちゃダメだと泣いて歯を食いしばって叫ぶが、中学生の女の子の言葉にしては、とても背伸びをしているような感じを受ける。普通、この年齢の女の子なら挫けてしまいそうなものだ。ひなたの家庭が、両親がおらず、祖父、そして姉・あかりが生活を切り盛りし、まだ小さい妹・モモがいるから、普通の家庭の中学生の子よりしっかりしているというのもあるかもしれないが。ひなたは、行かないと一生後悔する気がする、と修学旅行にも行くが、やはり一人ぼっちになってしまう。ストレスで胃痛になって、とても不安な中、そこへ、零が駆けつけるのだ(たまたま対局が大阪であり、ひなたの修学旅行は京都だった)。なんともロマンチックに見えるが、そう単純なものではない。零は、ずっとひなたの話を聞いていて、ひなたのために何かできないかと奮闘し、胃痛に効く良い薬があると知れば、それを届けようと、一人ぼっちになっているであろうひなたを心配して、ひなたのもとへとんでゆく。これは、決して王子様みたいな存在ではなく、もっと深い愛情を持った存在だ。

近年、若年層の自殺の深刻さがよくニュースになっている。中学生だったり高校生だったり、この作品でリアルに描かれたスクールカーストや、親が子供と向き合わないなどに悩まされている子供たちの自殺も少なくないと思う。さらに、モンスターペアレンツだったり、ニュースで見たりする言葉が、この作品では事実としてひなたたちを襲う。でもひなたが負けなかったのは、ひなたには、常に誰かがついていたからだと思う。そしてひなたも、一人で抱えこまずに、ちゃんと話していたからだと思う。ひなたが嘘をつかずに正直に話して、そしてそれが間違っていないことだと聞く方も理解できるから、みんな味方につくし、一人にしないように気にかけるのだ。だから、ひなた自身の強さもあっただろうけど、負けなかったんだと思った。そして、いじめで自殺をしてしまう子には、こういう人がいないのかもしれないと思った。本人がちゃんと話すことができればそれが一番だけれど、その言葉にきちんと耳を傾けて、理解して、物理的にも精神的にも側にいてあげることが、いじめに苦しめられている子供(受ける方もする方も、さらに大人も含め)を救う一番の方法なんじゃないかと思う。それを、この作品では、一般的と言える家庭生活を送っていないキャラクターたちが実現しているのだ。この作品は、普通の生活を送れている人にもそうでない人にも、当たり前すぎて見落としてしまうような「幸せ」のかたちを、改めて教えてくれると、しみじみ思った。

第2シリーズでは今後、零だけでなく周りの人々の物語も紡がれていく。原作にほぼ忠実なアニメシリーズだからこそ、漫画で描かれていたものが、色が付き、動いて、喋ることで、文字だけで見ていた言葉やモノローグが、どんな色彩を放つのか。次回、10月28日(土)放送の第3話から、前述している、ひなたがいじめと闘うストーリーへ展開していくので、しっかりと見届けていきたい。(中川志織)
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