2017年、ネットの海に突如現れたポップの変異体=Superorganismの正体とは?

2017年、ネットの海に突如現れたポップの変異体=Superorganismの正体とは?

今年3月、フランク・オーシャンが自身のラジオ番組「blonded RADIO」にて流した奇妙な1曲“Something For Your M.I.N.D.”。Superorganismなるアーティストの同楽曲は、その後ヴァンパイア・ウィークエンドのエズラ・クーニグも自身のラジオ番組で流したとか。そんなニュースが先行したせいか「一体Superorganismとは誰なのか?」という疑問ばかりがネットに溢れることとなった。

一体Superorganismとはどこの誰が、どんな活動をしているのか。ここでは、現在までの彼らの軌跡を追いつつ、その正体を少しではあるが暴いていきたい。

ニューイングランドはメイン州の高校に通っていた日本人の少女Oronoの元に届いた1通の電子メール。そのメールにあった1曲のMP3音源にOronoがボーカルパートを加えて返信したことで生まれた曲が“Something For Your M.I.N.D.”だったという。

Superorganism - Something For Your M.I.N.D.

ザラついたサウンドからは様々な楽器の音色が聴こえ、Oronoのアンニュイな声と合わさることでそれらが「キャッチー」という言葉に落ち着く。楽曲は今年1月に公開され、各ストリーミング・サービスでも配信が開始。その後は上記に記した通り、フランク・オーシャンらを媒介にして瞬く間にミステリアスな存在となっていった。

メンバーは全部で8名(アーティスト写真やライブ映像では7名しか映っていないものもあるが8名が正式人数)。その国籍はロンドン、日本、オーストラリア、ニュージーランドと様々で、ロンドンを拠点に皆で共同生活を送りながら、電子メールなどを介して制作を行っているという。

“Something For Your M.I.N.D.”発表後、「デーモン・アルバーンの別プロジェクトか?」などの噂が飛び交う中で、4月には新たなる楽曲“It's All Good”を発表。“Something For~”以上にコラージュ感が強いこのスローテンポな楽曲は、ポスト・ロックとも、またはヴェイパーウェイヴの突然変異とも受け取れる中毒性を持ち合わせている。テーム・インパラアリエル・ピンク、そしてMGMTなどとも共振しそうだ。

Superorganism - It's All Good

続けて6月にも新曲“Nobody Cares”を公開。そのミュージック・ビデオと同じく、繰り返されるエレクトロな展開と掴みどころのないポップセンスには少し狂気すら感じる。

Superorganism - Nobody Cares

そんな現行の音楽シーンの反応に媚びず、あくまで8人の好みで自己完結するSuperorganismの音楽活動は、実はいま最もトレンディな活動スタイルなのかもしれない。それを証明するように、彼らは今年9月に名門Domino Recordsと契約。その後は「NME」「FADER」のインタビューに応じるなど、今後も彼ら自身の口でその正体が明かされていくことだろう。

10月にはロンドンにて初となるライブも開催。そこでは上述の3曲に加え、今後リリースされるであろうデビュー・アルバムに収録予定の曲も披露されたのだとか。さらには英TV番組「Later… with Jools Holland」にも出演。それまで音源かライブ会場でしか感じることのできなかった彼らの音楽が、公共の電波に乗って多くの人の目に止まったであろうこのパフォーマンス。おそらくSuperorganism にとってもエポックメイキングな瞬間だったはずだ。

Superorganism - Something For Your M.I.N.D

と、ここまで紐解いてきてみたが、やはりその全貌はなかなか見えてこない。1通のメールのやりとりから始まったグループが、大きなうねりをあげて何か大きな爪痕を残そうとしているこの現状。そんな本質を見せようとしないSuperorganism、今後より強大な超個体(Superorganism)となるか、その動向を観察していきたい。
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