歌詞が特に注目されているこの曲だけれど、メロディやサウンドも含めて、ロックの、恋に焦がれたり、恋を乗り越えたり、恋に痛む胸に寄り添うところにフォーカスしているところが僕は画期的だと思う。
恋心に寄り添うならばJ-POPやR&B、もしくはその向こうにある欲望や本能を直撃するならEDMが主流で、ロックのメロディの乾きやビートの熱量にラブソングを彩るものというイメージは薄い。
そんな常識を覆す手触りが“君はロックを聴かない”にはある。
アナログレコードに針を落とす感覚が、一周回って新しいテクノロジーに触れるのと同じくらい新鮮なものになったとも言える今という時代において、ロックのメロディの乾いた質感が撫でる胸の痛みは、ロックのビートが駆り立てる血流の速さは、そして自分を盛らない正直な言葉は、リアルタイムな青春を彩る有効なツールになり得る。
それを証明するような作りでこの曲はできている。
ロックをモチーフに、あいみょん自身がロックから受け取って血肉にしてきた素材だけを使いながらも、ロックという言葉が持つイメージの枠を何気に取り払うような仕上がりで、ただ「今」を震わせる歌として届けられたのが“君はロックを聴かない”。
その自然体が、僕はあいみょんの新しさだと思う。
そう考えると『ミュージックステーション』で彼女がバックに背負ったジャケットがパーソナルなセレクトだったのも改めて納得。(古河晋)