現地時間3月4日に開催された第90回アカデミー賞授賞式にて、スピーチの時間が最も短かった受賞者に1万7900ドル(約198万円)相当のジェットスキーとアリゾナ州のハヴァス湖への航空券・ホテル宿泊券が進呈される企画が行われた。
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』で主演男優賞を受賞したゲイリー・オールドマンをはじめ、『スリー・ビルボード』で助演男優賞を受賞したサム・ロックウェル、『ゲット・アウト』で脚本賞を受賞したジョーダン・ピールらがこの企画に関する冗談を混じえたスピーチを行っていたが、結果的にジェットスキーを獲得したのは『ファントム・スレッド』で衣装デザイン賞を受賞したマーク・ブリッジスだった。
授賞式の司会者を務めたジミー・キンメルのTwitterでは、ヘレン・ミレンと共にジェットスキーに乗ってステージに登場するマーク・ブリッジスの映像が公開されている。
今回のこの企画は、受賞者たちのスピーチを短縮させることを目的にジミー・キンメルが発表したものだ。
主に関係者や家族への感謝のコメントで長くなりがちなスピーチだが、キンメルはこれをなるべく短くしようと今回の企画を受賞者たちに提案。このアイディアが生まれたのも、設定された時間制限を超える長いスピーチのために授賞式が長引いてきてしまった過去があるからだ。
キンメルによる提案のおかげで式が例年より早めに終了したかどうかはまだ分かっていないが、本記事では今回の企画が提案されるきっかけともなった長いスピーチを振り返るべく、「The Hollywood Reporter」の記事に掲載された「最も長かった受賞スピーチトップ10」の中から上位5位を紹介していく。
ランキングは2016年までの25年間のスピーチを対象としており、スピーチのワード数を長さの判定基準としている。
5位:アル・パチーノ
<475ワード>
『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』(1992)で主演男優賞を受賞したアル・パチーノ。
アル・パチーノはこの日、感謝を伝えるべき相手の名前を書いた長いリストを開いてスピーチを開始。エピソードを混じえながらリストに載っている人物1人1人に感謝を述べた結果、スピーチは歴代5位の長さとなった。
4位:ジェイミー・フォックス
<490ワード>
『Ray/レイ』(2004)でレイ・チャールズを演じきり、主演男優賞を受賞したジェイミー・フォックス。
スピーチの終盤では涙を堪えつつ、自身にとっての最初の演技の先生だったという祖母への感謝のコメントを述べた。
ジェイミー・フォックスは同作の演技で、ゴールデン・グローブ賞、英国アカデミー賞、全米映画俳優組合賞(SAG)などでも主演男優賞を受賞している。
3位:ケイト・ブランシェット
<513ワード>
『ブルージャスミン』(2013)での主演女優賞受賞で通算3つ目となるオスカー像を手にしたケイト・ブランシェットは、3位にランクイン。
「女性が中心になった映画でもたくさんの人が劇場に足を運び、興収を稼げることがこれで分かったでしょう」とのコメントで会場からの歓声を浴びたケイトのスピーチだったが、冒頭で他の候補者たちの演技や思い出を長々と述べたことが時間制限を超えるスピーチになってしまった原因のようだ。
2位:ハル・ベリー
<528ワード>
ハル・ベリーは、『チョコレート』(2001)で黒人女性として初の主演女優賞を受賞した。
黒人女性で初めての受賞は「私個人だけの問題ではない」と、ドロシー・ダンドリッジやレナ・ホーン、ダイアン・キャロルといった歴史に名を残してきた黒人女性たちにもオスカーを捧げるとコメント。
2018年現在に至るまで、ハル・ベリー以外に主演女優賞を受賞した黒人女優は現れていない。
1位:マシュー・マコノヒー
<549ワード>
歴代トップの長さを記録しているのは、『ダラス・バイヤーズクラブ』(2013)で主演男優賞を受賞したマシュー・マコノヒーだ。
HIV患者である主人公で実在のカウボーイ、ロン・ウッドルーフを演じるため大幅な減量の上同作に挑んだマシュー・マコノヒーだが、スピーチではこの役を演じる上で用いたという自身のモチベーションを保つ方法について早口で語った。
スピーチの最後は、自身の原点である『バッド・チューニング』(1993)で演じたデヴィッド・ウッダーソンの口癖、「alright, alright, alright」で締め括っている。
45秒以内という時間制限が設けられている授賞スピーチだが、そもそもは1943年に『ミニヴァー夫人』で主演女優賞を受賞したグリア・ガースンの6分近くに及ぶ長いスピーチがきっかけだと言われている。
しかし制限が設けられてもなお、4、5分に至る長いスピーチを行ってしまう受賞者たち。2016年にはとうとう、「感謝を述べる相手」のリストを前もって提出するというルールまで設けられ、45秒の時間制限を厳格に守らなければならなくなった。
今回紹介したような「長過ぎるスピーチ」が過去のこととして懐かしまれる日も、そう遠くないかもしれない。