Aqua Timezという祈るように音楽で人々を救い続けてきたバンドの解散に寄せて

Aqua Timezが2018年、年内の活動をもって解散することを発表した。

2005年にインディーズでデビューするとたちまち“等身大のラブソング”が話題となり、1stミニアルバム『空いっぱいに奏でる祈り』が80万枚の大ヒットとなるなど、楽曲が支持されての理想的かつ華々しいスタートを切った彼ら。その後も“決意の朝に”や“虹”など数々のヒット曲を生み出し、『NHK紅白歌合戦』に出場するなど、まさに国民的ロックバンドとして歩んできた。

Aqua Timezがバンドとして何故こんなにも支持されてきたのかをあらためて考えると、それはやはり太志(Vo)というフロントマンによる唯一無二の、しかし圧倒的な普遍性を持った「歌」によるものが大きかった。彼は孤独や不安を抱えた10代、もしくはかつての自分自身を救うために言葉を放ってきた。その「歌」は常に、独白であり、祈りでもあった。そしてそれをメンバーであるOKP-STAR(B)、大介(G)、mayuko(Key)、TASSHI(Dr)がポップミュージックとして最大限の輝きを放つように磨き上げてきた。自分が音楽で救われたように、誰かを音楽で救いたい、そんな風に志すことはよくある話かもしれないが、その軸をぶらさずに長い年月をかけて活動をし続けることは決して容易いことではないと思う。特に、Aqua Timezのように早い段階からセールス的にも結果を残したバンドであればなおさら、バンドを取り巻く環境、個々の人生や価値観だって変わることもあるだろうと思うが、彼らは、その作品を聴けばわかるとおり一貫してメッセージを届け続けた。聴く者の心に寄り添い続け、音楽で手を差し伸べ続けた。いつだって誰もが口ずさみやすいメロディで、時に生々しい言葉と激しいサウンドで。

最新アルバム『二重螺旋のまさゆめ』はAqua Timezからの最後の手紙を読むように聴くにふさわしい作品だ。みんなで笑って踊れるようなファンキーなサウンドで仕上がった“+1”などライブやファンのことを思い浮かべながら作られた楽曲があったり。《あなたを好きになってよかった 永遠などなくても》という切ないフレーズではじまる極上のラブソング“タイムマシン”や、Aqua Timezというバンドで見てきた夢の日々を振り返るような“last dance”など、最終章にふさわしい物語がたくさん詰まっていて胸がいっぱいになる。今作を作り終えて「全てを出し切ったような、燃え尽きたような感覚」があったとTASSHIはコメントしていたが、過去にいつ、そんな感覚になってもおかしくないほどAqua Timezは全力で1曲1曲を生み出してきたバンドだと思う。だからこそ、2018年内での解散というニュースには驚かされたし、やっぱり悲しい。

最後の全国ツアー「Present is a Present tour 2018」は始まったばかり、そして11月18日(日)に横浜アリーナでのラストライブ開催が発表された。これまで多くのリスナーを音楽で救い、そして長く愛されてきた彼らの歩みが止まってしまうことは残念だけれど、その活動は日本の音楽シーンにも大きな爪痕を残し、そして影響を与えてきた。Aqua Timezがたくさんの歌に込めた祈りが最後まで多くの人に届きますように。(上野三樹)
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