チャットモンチー×Base Ball Bearの、固く結ばれた友情について

チャットモンチー×Base Ball Bearの、固く結ばれた友情について - 『たったさっきから3000年までの話』『たったさっきから3000年までの話』
チャットモンチーが今月6日にリリースしたアナログ盤『たったさっきから3000年までの話』に、“恋の煙 (同期ver.) with 小出祐介 (Base Ball Bear)”という曲が収録されている。

この「同期」というのは、同期ビートに合わせて、デビュー同期のBase Ball Bear・小出祐介とデュエットしたという意味とのこと。がっつりハウステイストのビートやシンセに、これまで多くのバンドサウンドの上で歌を歌い上げてきたチャット・橋本絵莉子、ベボベ・小出のボーカルが乗っかっているのは、とてつもなく新感覚だ。またエモーショナルな原曲の歌い方とは打って変わったクールなボーカルでありながら、10年以上の付き合いを経てお互いいい大人になった橋本・小出による掛け合いがたまらない色香と切なさを醸していて……とにかく痺れる1曲となっている。

そもそもこの2組がチャットモンチー完結直前のタイミングで楽曲を作るということ自体、非常にエモいことだと思う。チャットモンチーとBase Ball Bearは同じ事務所に所属しており、デビューまもない頃にはシュノーケルを含めた3組で「若若男女サマーツアー」を開催し、ともに全国各地をまわった仲(ちなみにこの3バンド、なんと今年の「こなそんフェス」で同じ日に集結する)。その後もチャットの福岡晃子によるベボベの楽曲“クチビル・ディテクティヴ”、“夜空1/2”へのボーカル・作詞参加や、リスナーから寄せられたラブレターに即興で曲をつける企画、2バンドのいろんな意味で「破格」な演技が飛び出すラジオドラマなどで感動&抱腹絶倒の嵐を巻き起こした期間限定ラジオ『チャボベLOCKS!』での共演などなど、数えきれないくらいさまざまな場面で、仲睦まじい姿を見せている。

しかし2組は、ただ楽しさや喜びの中で戯れるだけの関係ではない。それぞれのバンドがハードな局面に立たされた時――つまり、メンバー脱退という困難に面した時に現れた深い友情が、それを証明している。

2011年9月、チャットモンチーから高橋久美子が脱退した。翌年バンドはベストアルバムをリリースしたが、その作品に付属されているライナーノーツに、小出が執筆したものがある。
そこには、チャットと出会った頃の話のほか、脱退の悔しさやさみしさを乗り越えた上で、高橋がこれから生み出す表現を心待ちにしているというコメントや、チャット2人の未来にも「楽しみしかない」という前向きな言葉が掲載されている。これだけでもかなりグッとくるが、それがライナーノーツらしからぬ手紙の文体で(語り口調で)ありのままに綴られており、言葉を超えた強い親愛が滲み出ているのを感じて、胸がじーんとする。さらにライナーノーツの最後に書いてあるポラロイド写真のいたずらのくだりも、小出がいかにチャットモンチー3人のことを心の友だと思っているかが伝わってきて、読み手ながらに涙腺がぎゅっと締め付けられてしまう。なんて愛らしい関係なんだろうときゅんとするのと同時に、だからこそやってくる爽やかな寂しさが、天気雨のようにさあっと心に降り注ぐのだ。

一方2016年3月には、Base Ball Bearから湯浅将平が脱退した。バンドサウンドのみで作曲をしていたベボベは打ち込みを交えた楽曲も制作するようになり、その後新体制初のアルバム『光源』を作り出す。このアルバムを携えたツアーでは、苦難を乗り越え新しい音楽の作り方を会得したメンバーが音楽活動に対する充実感を語っており、ライブ中の表情にもそれまでで最上の明るさを宿らせていた。チャットモンチーは高橋の脱退後、新体制&メカ化でどんどんニュータイプの作品を作りリスナーを驚かせていったが、おそらくベボベはそこにバンドを存続させていくヒントを得て、結果的に名盤と名高い『光源』を生み出し、より豊かな音楽の楽しさを享受することができたのではないかと思う。楽しい時間だけではなく、バンドとしての生き方をも分かち合える関係、それがチャットモンチーとBase Ball Bearなのだ。本当に強い友情とは、こんな風に大きな力を持ち、当事者たちの運命を動かしうるものなのかもしれない。2組の特別な繋がりを見て、そんなことを思った。

冒頭にあげた“恋の煙 (同期ver.)”のエレクトロ感はかなり新鮮に聴こえたが、しかし両者が辿ってきた道程を鑑みれば、このサウンドになったのも大いに頷ける。なぜならこの曲は、困難を越え進化し続けた2組の最新形態の、いわば交差点のようなものだからだ。最後の最後まで新たな手法を尽くして双方のリスナーがわくわくするような音楽を作ってくれた最高の同期たちに、今あらためて感謝の気持ちと敬意を表したい。(笠原瑛里)
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