ラジオを点けるだけで星野源のライブを「最前」で聴ける――『星野源のANN』弾き語りライブの幸せ

7月31日の深夜1時から生放送された『星野源のオールナイトニッポン』は「2時間生演奏!星野源 弾き語りライブinいつものラジオブース!」と題され、タイトル通り、星野が2時間、ラジオブースから弾き語りライブを届ける放送だった。

この番組では、星野たっての提案で去年、一昨年とラジオブースにバンドメンバーを迎えて2時間ライブを行う企画が放送されているが、今年は趣向を変えて弾き語りに。恒例となっている放送作家の寺坂直毅による口上から、番組スタート後すぐに歌われた1曲目は、普段のライブでも弾き語りで披露されることの多い“くせのうた”。ラジオから星野の歌声とギターだけで届けられると、この楽曲の《君の癖を知りたいが ひかれそうで悩むのだ》といった詞の世界観により惹き込まれるような感覚になった。

次の楽曲“恋”がレアな弾き語りver.で届けられたあとに披露されたのは“ひらめき”、そして“老夫婦”という、どちらも星野のソロデビューアルバム『ばかのうた』に収録されている楽曲。さらに、次の曲が“日常”という、最近の星野のライブでは歌われていなかった楽曲が、弾き語りライブということもあってか続々と聴けたのもファンとしては嬉しいセットリストだった。また、今年はリスナーからのリクエストを募集しており、よりラジオならではのライブになっていたのも去年、一昨年のラジオブースでのライブとは違った点だろう。“日常”には、リスナーから、自身が被災した際にこの曲に励まされたというメールが届いていた。それを受けて星野は、この曲が収録されている2011年に発売されたアルバム『エピソード』を「いろいろな気持ちでアルバムを作っていた」と明かし、「現在も大変な思いをしている人になんとか届いたら」と語っていた。

後半からは、星野のバンドメンバーであり、ラジオブースでのライブ皆勤賞となる長岡亮介(ペトロールズ)が参加。2014年の12月に横浜アリーナで行われた星野のライブ「ツービート/弾き語りDAY」以来のふたりでのライブとなった。前半とは一転、“化物”、“プリン”とアップテンポなナンバーをふたりの個性の違うギターで奏でていく。特にライブ初披露となった“プリン”は曲中にトークを挟んだり、ファルセットで歌ったり、やっぱり地声に戻したり、とCD音源同様遊び心満載で番組が押してしまうほど楽しい演奏だった。

本編最後の曲として歌われたのは長岡のコーラスが光る“SUN”。ギター2本のシンプルな演奏によって、メロディーの気持ち良さを改めて再認識させられ「やっぱり“SUN”最高だ!」と唸らされた。そして、アンコールは3年連続で、番組のエンディング曲でもある“Friend Ship”が歌われ、2時間のライブは幕を閉じた。

結果的に9曲を弾き語りしたライブとなった今回の放送。番組でのこれまでの弾き語りを聴いても思っていたが、星野のあの歌声による弾き語りとラジオの相性の良さは抜群で、まさに目の前で語りかけられているような感覚になる。さらに、1stアルバム、2ndアルバム収録の名曲が多く聴けたのも良かった。3年連続でのラジオブースからのライブなので忘れがちだが、ラジオを点けるだけで、「最前」で星野のワンマンライブを聴けるのだからこんなに贅沢なことは無いだろう。様々な環境にいる全国のリスナーにとって、《暗い道でも 進む》ための大事なものとなった放送に違いない。(菊智太亮)
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