改めて轟いたボーカリスト・宮本浩次の凄さ――椎名林檎、スカパラとの衝撃の共演について

先日の『ミュージックステーション』で実現した椎名林檎と宮本浩次“獣ゆく細道”のライブパフォーマンス。クールな立ち姿で歌い続ける椎名林檎と対照的に、衝動と狂気をステージいっぱいに解き放ったような宮本浩次の激唱ぶりが大きな話題を集めたのはご存知の通りだ。


しかし、僕がそのパフォーマンスを観ていて最も凄味を感じたのは、観ているこちらが心配になるくらいのアクションの激しさそのものではなく、狂騒の化身の如き躍動感の中でもピッチ(音程)も外さず、椎名とのハモりも完璧に決めながら、椎名やELEVENPLAYの立ち位置&動線を一切遮ることなく壮絶に暴れ回ってみせた宮本の「狂気の統率者」としての底力においてだった(最後のキメの宮本のピースサインで椎名がこらえきれず笑ってしまったのはご愛嬌の範疇だろう)。
《正体は獣》――その「獣」の真価は衝動自体よりも、それすらも自らの歌の一部として配してみせる獰猛な表現者精神にある、ということだ。

そして、11月28日にリリースされる東京スカパラダイスオーケストラのニューシングル表題曲“明日以外すべて燃やせ feat.宮本浩次”。
冒頭の《人生は美しいアルバムじゃない/撮れなかった写真さ》のラインで聴く者すべての魂を鷲掴みにした瞬間から、宮本の歌とスカパラの音像を通して、タフな包容力にあふれたダンディズムが交錯する。最高のコラボレーションだ。


「東京スカパラダイスオーケストラは『音』で、言葉ではないその『音』で魂を歌ってたんだということを今回は本当に実感しました。スカパラの魂を代弁しないといけないということで、緊張しました」(宮本)
「宮本くんに歌ってもらうためには、本当に自分の人生が変わるような歌詞であってほしいし、聴いた人すべての人生が変わるような歌詞であってほしい」(谷中敦)

同じEPICソニー(現・EPICレコードジャパン)でデビューを飾り、奇しくも谷中敦(“明日以外すべて燃やせ”作詞)&沖祐市(同作曲)と宮本は同い年ながら、ここまで重なり合うことのなかったふたつの軌道が邂逅した――という喜びを、他でもない本人たちが一番感じていることが、MV中盤のインタビューシーンの「同い年ハグ」からも十分すぎるくらいに窺える。

いずれのコラボレーションからも浮かび上がるのは、宮本浩次という稀代のロックボーカリストにしか到達し得ない歌の迫力と、その歌に対するコラボ相手=椎名林檎/スカパラの惜しみないリスペクト(と畏怖)である。
そして同時に、デビュー30周年を経てなおエレファントカシマシが未完の黄金時代を描きつつある中、日本のロックの至宝たるボーカリスト=宮本浩次の可能性が無限大に開かれつつあることを、他ならぬ椎名林檎/スカパラがその楽曲を通して最大限に祝福していることだ。

年末には「椎名林檎と宮本浩次」として『紅白歌合戦』にも出演が決定しているし、宮本とのコラボのオファーは今後さらに増えることは想像に難くない。日本屈指のバイタリティを体現するその絶唱が、ホームグラウンド=エレファントカシマシではもちろんのこと、それ以外の場でもますますでっかく咲き誇ってほしいと思う。(高橋智樹)
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