【速報】宇多田ヒカルがデビュー20周年を迎えた夜。華麗にして人肌の温もりが伝わるツアーファイナルを観た

11月から繰り広げられてきた「Laughter in the Dark Tour 2018」のファイナル、幕張メッセ。世代も、文化背景も異なる大勢の人々が詰めかけた会場で、宇多田ヒカルは『Automatic / time will tell』リリースからちょうど20年の夜を迎えた。その話題になると祝福の拍手喝采が鳴り止まず、彼女は「序盤から泣かせに来ないで」と照れ臭そうに告げ、さらにオーディエンスとの距離を詰める。

でも実際のところ、彼女はこの大きな節目については割と無自覚だったようで、とにかく目の前のショウを全力でやり切るんだ、ということに意識を集中しているように見えた。おそらく、ツアーの全公演がそうだったのだろう。近作にも参加した世界トップクラスのミュージシャン陣による演奏はとんでもないクオリティで、抑揚の効いた照明演出も見事だったが、それ以上に宇多田の曲、歌声、立ち居振舞いの存在感が異様に大きいのである。そのことに気づいて唖然とした。

でも、その巨大な存在感はオーディエンスを威圧するものではなく、ライブが進むほどに人間・宇多田ヒカルとのコミュニケーションが明瞭になってゆく。ああ、彼女はこういうライブがやりたかったんだ、と思わせるところまで、繊細な配慮が行き届いた素晴らしいステージだった。ライブ中のショートフィルムで彼女が語っていた「絶望の中のスタンダップコメディ」。ツアータイトルにも繋がるそのテーマについて、あらためてライブレポートに書きたいと思う。(小池宏和)