その象徴とも呼べるのが、マッチョな若い男たちで構成された天狗倶楽部。このドラマの主人公=日本で初めてオリンピックに参加した男・金栗四三(中村勘九郎)の盟友である三島弥彦(生田斗真)を中心に、吉岡信敬(満島真之介)や押川春浪(武井壮)らの、「び・い・る!び・い・る!」の掛け声と共にすぐ脱ぎすぐ呑む(笑)、ちょっとチャラい感じが大河ドラマという敷居の高さの中で急激な親しみとなって目に飛び込んできた。彼らは純粋にスポーツを楽しむ日本人の象徴としても描かれていた。
そしてラストの数分でようやく登場した金栗四三は走りながら頭から血を流しているような、それが歌舞伎の隈取にも見えるような演出が見どころだった。原因は帽子のインクが雨に濡れて溶け出してしまったからだなんて、明治時代だったらそんなこともあったのかもな、と思わず笑みがこみ上げてくる。
大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』は、2020年の東京オリンピックを来年に控えてスタートし、国民の気持ちを盛り上げようという想いももちろんあると思うのだけれど、まずは「楽しいの? 楽しくないの?」と視聴者にも突きつけるようにして始まった痛快さ、その心意気とセンスが随所に感じ取れた。ここから1年、オリンピックにおける知られざる日本人の泣き笑いを、この豪華絢爛なキャストがどう演じてくれるのか、その期待値が一気に高まった初回放送だった。(上野三樹)