嵐が20年目の決意を語った『SONGS』を見た

先日、が『SONGS』に登場した。結成から20年目にして、なんと初出演。事前に告知されていた番組紹介には、「大切にしてきた楽曲への思いとともに、彼ららしい強く前向きなメッセージを届ける」とあり、待ちに待った放送!という方も多かったのでは。相葉雅紀松本潤二宮和也大野智櫻井翔、それぞれへのインタビューといくつかの楽曲を大きく3つの章に分け、嵐の20年間を紐解いていく内容であった。

まず「Track1」は「デビューから一転 模索する日々」と題し、ハワイ・ホノルルでのデビュー会見を始まりに、活動初期の頃を振り返った。今や日本が誇るアイドルだけれど、これまでの道程が真っ直ぐな道でなかった日々のなかで、「嵐」としての個性を探し求めたこと、相葉の自然気胸により4人のみの活動時期があったこと、プライベートレーベルの立ち上げ、伸び悩む人気……番組内で取り上げられたトピック以外にも、彼らがぶち当たった壁はもっとたくさんあったはずだ。

全編ラップで構成され、リリースした2002年当時としては「アイドルがラップをやる」という前代未聞的な曲だった“a Day in Our Life”。二宮は「翔ちゃんのなかで(ラップをやること自体が)だんだんと責任に変わっていった」と語っていたが、事実、ラップを担当する櫻井は技術を自身の手で磨き上げてきたわけである。この曲を400人のファンが囲む円形のステージで、5人は白スーツに身を包み披露。櫻井が感じていた責任は、だんだん夢とイコールになっていったのか――この曲然り、他の曲然り、何かを放てば必ず応えてくれる人たちが彼らにはついているわけである。ひとつずつ着実に“a Day in Our Life”を作り上げていくその姿は、《時が過ぎて見えてきたこと》を体現しているようだった。

「Track2」は、「国民的アイドルへ」。この章で焦点が当てられたのは、2007年にリリースされ、松本主演の『花より男子』シリーズのドラマ第2シーズンの主題歌“Love so sweet”。この曲は、多くの人が知っている嵐の曲だと思うし、番組内で「ブレイクのきっかけは何だったと思う?」という問いに対し、櫻井が「『花男』っすね」と即答していたくらい。アジアツアー、初のドーム公演、『NHK紅白歌合戦』への出場など挙げるとキリがないのだが、そう思えばこの時代あたりから、彼らが自分たちを投影する場所は徐々に大きくなり、多くの人が思い浮かべるであろう「今の嵐」に近いビジョンが形成されていったのは明瞭だと思う。しかし、こうして拡大化していくグループの規模に反比例するように、彼らが抱いたのは不安と焦りの気持ちだったのだという。相葉に至っては「怖かった、正直。なんか嵐っていうものが自分の中でめちゃくちゃ大きくて、めちゃくちゃ離れていくんすよ」と、赤裸々に当時を振り返っていた。絶望とまではいかないのかもしれないけれど、その言葉には闇の色を含んだ想いの巡りを感じた。「愛」と「希望」の唄を歌ってきた彼らは、本当は「孤独」という崖の上にいたのか、と。

それでも、嵐の翼をはためかせたのは、メンバーが口を揃えて言っていたように“Love so sweet”だろう。歌詞の《明けない夜はないよ》という言葉は二重否定=強い肯定、すなわち「明ける夜が必ずある」という意味だ、そう語りながら笑顔(それも悪戯っぽい顔)を浮かべていた櫻井の姿を見て、ただただ単純に「自分たちの唄が自分たち自身を救っていたんだな」と思った。自ら作詞作曲をした曲もあるけれど、“Love so sweet”も含め、多くの曲はそうではない。他人の音と言葉に自分の気持ちを乗っけて「自分のもの」として表現することって、簡単なように見えて実は難しい。でも、もともと無色だった音と言葉に、ちゃんと彼らは自分たちの色をつけることができる。スタジオの白い床の上で真っ白なスーツをまとった姿でこの曲を歌い上げた5人を見て、なんだか泣きそうになった。

最終章「Track3」は「明日は僕らで描こう」として、グループとしての活動を休止する2020年末に向けての彼らの決意が語られ、番組の締めくくりとして“君のうた”を披露。「“君のうた”は、今だからこそ5人が歌って成立する」だなんて大野が言うものだから、この曲を披露していたほんの数分でさえも愛おしく感じてしまった。その僅かな時間の中でも、「過去への感謝を忘れずに時間を過ごしたい」という意思がはっきりと切り取られる。そして、曲のなかで交わされる《いつか巡り逢える虹の橋で 同じ夢を見よう》という約束の言葉。目の前の音楽に寄せる気持ちは、その時々で変わったっていい。それでもこの曲はずっと、《君》と明日を描くことを誓う唄であって、メンバー同士が《永遠の絆》を結ぶ唄だと思う。

番組のなかで、松本は2020年12月31日のことを「ゴール」だと言っていた。確かにその日は嵐が歩みを一度止める日であるから、今そこに向かうのは当然。でも、来たるその日は、閉まっていた扉を開けて新たな希望を目指す「スタート」の日でもあるんじゃないのかな。みんなの心が交わるただひとつの点は「嵐」だけだから、彼らと私たちが開ける扉はきっと同じなはず。たくさん寄り道をして、過去を優しく抱きしめながら、笑って迎える日であって欲しいと、『SONGS』を観た今だからこそ強く思います。(林なな)
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