別れの記憶や、宙ぶらりんになった愛を無数のメロディに込めてきたサザンだが、《愛はスローにちょっとずつ/黄昏(セピア)に染まるんだ》と歌われるこのナンバーでは、離別の後の孤独に過ごす時間が、まさにスローな時間芸術として描かれている。
公式サイト上には、『SOUTHERN ALL STARS YEARBOOK「40」』収録のインタビューから抜粋されたメンバーの言葉が掲載されているけれども、桑田佳祐はその中で、音源化されていない楽曲を大規模なツアーで披露したことの意外性と、それを可能にした長いキャリアの自信、お客さんとの信頼感に触れているのだ。
孤独な時間を埋めるために、数え切れない人々がサザンのラブソングを聴き、バンドのキャリアを支えてきたという事実。スローに、しかし確実に流れてゆく時間は、サザンのデビュー40周年という長い歳月と重なって聴こえる。リスナーそれぞれの記憶と感情に揺さぶりをかけながら、ポップな中にもキャリアの深みを滲ませた新曲である。(小池宏和)