サザンオールスターズ/東京ドーム

サザンオールスターズ/東京ドーム - All photo by 西槇太一All photo by 西槇太一

●セットリスト
01.東京VICTORY
02.壮年JUMP
03.希望の轍
04.闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて
05.SAUDADE~真冬の蜃気楼~
06.彩~Aja~
07.神の島遥か国
08.青春番外地
09.欲しくて欲しくてたまらない
10.Moon Light Lover
11.赤い炎の女
12.北鎌倉の思い出
13.古戦場で濡れん坊は昭和のHero
14.JAPANEGGAE(ジャパネゲエ)
15.女神達への情歌(報道されないY型の彼方へ)
16.慕情
17.愛はスローにちょっとずつ(仮)
18.ゆけ!!力道山
19.CRY 哀 CRY
20.HAIR
21.当って砕けろ
22.東京シャッフル
23.DJ・コービーの伝説
24.わすれじのレイド・バック
25.思い過ごしも恋のうち
26.はっぴいえんど
27.シュラバ★ラ★バンバ SHULABA-LA-BAMBA
28.マチルダBABY
29.ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)
30.イエローマン~星の王子様~
31.マンピーのG★SPOT

(アンコール)
EN01.I AM YOUR SINGER
EN02.LOVE AFFAIR〜秘密のデート
EN03.栄光の男
EN04.勝手にシンドバッド
EN05.旅姿四十周年


怒涛の全36曲、3時間超。デビュー40周年イヤーに、全国6大ドームを含む22公演を駆け抜けてきたツアー「“キミは見てくれが悪いんだから、アホ丸出しでマイクを握ってろ!!”だと!? ふざけるな!!」。集まった5万人のファンと共に、40周年とツアー千秋楽を盛大にセレブレイトする感涙のステージ……ではなかった。いや、もちろんそれもあるし、思い出のナンバーを生み出し続けてきた国民的バンドの姿がそこにあったのだけれど、それ以上に「やっぱりサザンオールスターズはヤバい」という事実を突きつけてくる一夜だったのだ。反骨精神むき出しのツアータイトルは伊達ではない。

アコギを抱えた桑田佳祐(Vo・G)のシルエットが幕に浮かび、高らかな歌声でいきなりのチャントを巻き起こす“東京VICTORY”で、文字通りステージの幕が切って落とされる。過ぎ去った時間と遠くへ行ってしまった人々に思いを馳せながら、音楽によって何度でもフレッシュさを取り戻す“壮年JUMP”。そしてアップテンポな“希望の轍”で嬌声を浴びる。見事な立ち上がりだ。「いろんなとこに行きましたけれども、どこも盛り上がりませんでした」、「それでは、しみじみとね、最後の曲です。4曲目です」と余裕綽々で笑いを誘う桑田である。

この後には、ラテン歌謡テイストの“SAUDADE~真冬の蜃気楼~”や、お馴染みのサポートコーラス=TIGERが“てぃんさぐぬ花”の一節を差し込んでから突入する“神の島遥か国”、そしてアルバム『葡萄』からの“青春番外地”で若き日々の1ページを鮮やかに描き出すなど、歴代アルバム曲やシングルのカップリング曲などを次々にプレイしてゆく。“Moon Light Lover”で語るように雄弁に響く山本拓夫(Sax)のブルースハープ、そしてフラメンコダンサーを迎えた“赤い炎の女”では斎藤誠(G)のスパニッシュなギターが情熱的に踊りまくるなど、官能的なナンバーの数々も豊穣なアレンジに彩られている。

サザンオールスターズ/東京ドーム

原由子(Key・Vo)がリードボーカルを務める“北鎌倉の思い出”は、昨年リリースのプレミアムアルバム『海のOh, Yeah!!』に収録されていたナンバーだが、彼女の歌声でなびく《雪解けの水 絶えざるを願う頃》という美しいフレーズと、時空を捻じ曲げるような曲調にクラクラさせられる。桑田がメンバー紹介で片っ端からイジり倒す時間、松田弘(Dr)は高らかに「俺は巨人が大好きだーっっ!!」と叫んでいた。野沢秀行(Percussion)が紹介をスルーされてしまうのが悲しくも可笑しい。ユルユルとした時間が流れるけれども、いざ再び音が鳴り始めると、音楽の力でサザンの意のままに操られてしまうのである。

“古戦場で濡れん坊は昭和のHero”から“JAPANEGGAE(ジャパネゲエ)”へと猥雑なバンドグルーヴで繋ぎ、ドゥーワップコーラスから傾れ込む“女神達への情歌(報道されないY型の彼方へ)”など、随所で音楽の時間を濃くするアイデアも抜かりない。ディスコグラフィーの底力を見せつける選曲で観る者の胸を揺さぶり、そこに放り込まれる“慕情”やリリース未定の新曲“愛はスローにちょっとずつ(仮)”といった美しいソウルバラードがめちゃめちゃ効く。関口和之(B)は、ダンサーになる夢を叶えるべく“忘れられた Big Wave”でユーモラスに踊ってみせたりするのだけれど、次の瞬間にはデビューシングルのカップリング“当って砕けろ”でパンチの効いたベースラインを繰り出してくる。まったく気が抜けない。

海外レスラーと闘う力道山の勇姿をスクリーンに映しながらの“ゆけ!!力道山”、さらには「ベストヒットSAS」としての小林克也の登場に湧く“DJ・コービーの伝説”などは、演奏される数分間の間に、かつて抱いた強い憧れを呼び起こすものだろう。《夢と希望を五線譜に書き込んだら/新しいふたりの出発(たびだち)の日に/燃える太陽がロックンロールを踊っている》。そんな“はっぴいえんど”は、清濁入り乱れて駆け抜けてきたサザンのロックの時代を、すべて肯定するように聴こえていた。

サザンオールスターズ/東京ドーム

桑田がジュリアナギャルに混じって羽扇子を振りかざす“シュラバ★ラ★バンバ SHULABA-LA-BAMBA”からは、まさに記憶と感情のカオスを潜り抜けた先の爆発であった。ファイアボールと音玉も弾ける“マチルダBABY”、視界一杯に拳の突き上がる“ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)”、そして高笑いする黄色い仮面の怪人に誘われた“イエローマン~星の王子様~”。その絶頂に次ぐ絶頂は、デビュー以来破天荒でスリリングなままのロックバンド=サザンオールスターズそのものであった。セクシーなダンサーたちに囲まれた桑田は、一瞬の後に「てやんでい東京!」、「もっと来んかい!」という挑発の言葉と黄金のマイクを頭上に乗せたヅラ姿と化し、“マンピーのG★SPOT”を叩き込むのだった。

本編だけで30曲を越えているにも関わらず、「今日、帰るのやめますか〜!?」と笑顔で告げて始まるアンコール。“I AM YOUR SINGER”や“LOVE AFFAIR〜秘密のデート”はまるでウィニングランのように響き渡っていた。長嶋茂雄の引退スピーチ映像を振り返りながら始まるのは“栄光の男”だ。野沢が「俺のこと、メンバー紹介で無視するな!! 俺だってサザンが好きなんだ、ふざけるなーっっ!!」と魂の咆哮と共にパーカッションを轟かせると、サンバダンサーのみならずジャビットくんやフーテンの寅さんまでが踊り狂う“勝手にシンドバッド”である。圧巻だ。

桑田が最後に感謝の思いを伝え、「千秋楽となりますが、これからもサザンオールスターズをよろしくお願いします。その気持ちを込めて」と披露されたのは、“旅姿六人衆”を改変した“旅姿四十周年”。そこでは「東京ドームで また会おうね」と歌われ、万感の大合唱を導く。音楽への飽くなき探究心。ヒーローたちへの憧れ。体温ごと蘇る熱い恋心。そのすべてを抱いたまま、サザンはまた退屈で窮屈な日々を破壊しにゆく。デビューから40年を経てなお、途方もないエネルギーに満ちたロックバンドが、そこにはいた。(小池宏和)
公式SNSアカウントをフォローする
フォローする