『Live At The Empire Theater, Liverpool, UK, 29 November 1974』をはじめ、ピンク・フロイドの1974年録音の未発表ライブアルバム計13作品が昨年12月上旬、ストリーミング限定でリリースされていたのをご存知だろうか? オフィシャルなアナウンスもない中での、まさに突然の出来事だった。
ピンク・フロイドの未発表ライブアルバムに関して言えば、2021年には1970〜1972年の12作品、2022年にも来日公演も含む1972年の19作品が期間限定公開されていた。が、これはいわゆる年末恒例の著作権保護期間延長措置であろうと推測されていたし、今回の1974年音源公開も同様の事情であろうと思われた。とはいえ、理由は何であれ、『狂気』はもちろん発売前の“クレイジー・ダイアモンド”まで披露していた1974年当時の貴重なライブ音源に、サブスク経由で触れられるのは嬉しい限り――と思っていたら数日後、これまた何の予告もなく、今回配信された13作品がすべて配信リストから消えていた。何かのバグか? あるいは逆に、音源公開自体が何かの手違いだったのか?と混乱しつつも、2021年&2022年とは明らかに異なる展開に「これはもしかして何かのフラグか?」という期待感が頭を掠めたのも事実だ。
亡きリチャード・ライトに捧げた2014年の『永遠(TOWA)』リリースに際して「これがピンク・フロイドのラストアルバムになる」と明言していたデヴィッド・ギルモア。しかしその後、ロシア侵攻の被害を受けたウクライナの人道支援のためのシングル“Hey Hey Rise Up”を2022年4月に発表している。さらに、2024年の最新ソロ作『邂逅』には『永遠(TOWA)』と同じくライトのセッション音源を盛り込んでいたし、同作品を携えて開催したツアーでもセットリストの半分以上をフロイド曲が占めていた。そして、2025年は『炎〜あなたがここにいてほしい』発売50周年。長いこと袂を分かちつつライブでフロイド曲を披露し続けているロジャー・ウォーターズとの共演……は願望が過ぎるだろうが、今の彼らが「世界屈指のロックレジェンド」に留まらず、バンドとしての新たな「何か」を夢見ずにはいられない「現在進行形の表現者」であることは確かだ。(高橋智樹)
ピンク・フロイドの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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