ロック職人フジファブリックの「匠の技」が光る最強にテクい7曲はこれだ!

ロック職人フジファブリックの「匠の技」が光る最強にテクい7曲はこれだ!
デビュー15周年を迎え、さらなる飛躍の途にあるフジファブリック。彼らのキャリアを振り返れば、紆余曲折の歩みだったけれど、その音楽性はロックシーンを確かに前進させた。アルバムは1枚ごとに作風を塗り替え、楽曲には洗練されているのになんだかよくわからない、めちゃくちゃになってもいいやと思わせてくれる熱き魂が宿っている。「普通じゃつまんない」という精神こそがこのバンドのアンサンブルを形成しているのだ。それは山内総一郎(Vo・G)、加藤慎一(B)、金澤ダイスケ(Key)の現メンバー3人が、もともと途中加入した腕利きであることも関係している。というわけで今回は、その卓越した技術に裏打ちされた演奏の煌めきと一筋縄ではいかないフレーズやアンサンブルに焦点を絞り、フジファブリック史上最も「テクい」7曲について解説してみたい。「そうそう!」なり「もっと凄い曲やフレーズがある」なり、いろいろとツッコミを入れつつ楽しんでいただければ幸いだ。そしてもし、より深くこのバンドの音楽を楽しむ一助となれたなら冥利につきる。(秋摩竜太郎)


①TAIFU(2004年)

ロックの定型からハミ出るニューウェイブの薫り

メジャーデビュー作にして山内の加入後1枚目のフルアルバムとなる『フジファブリック』。今も色褪せぬ名盤から選んだ本曲は、まず加藤のベースが唸りを上げるイントロが鮮烈。次いで、ダンサブルロックの潮流を牽引したハイテンションなビート、そのウラ拍を強調した金澤のキーボードが独特な風合いをプラス。何より、鋭角に食い込む山内のニューウェイブ風ギターがニヒルに舞っている。一筋縄ではいかないフジファブリックの真髄が詰まったナンバーである。

②銀河(2005年)

端正なテクニックをぶっ飛ばす情熱の炎

デビュー当時の連続シングル、通称「四季盤」のうち、冬盤と言われているのがこの“銀河”だ。“TAIFU”の方向性をさらにブラッシュアップ。大サビ前の展開などアレンジ力の進化も叩きつけつつ、ファンキーに指板を駆け上がるBメロのベース、逆にコロコロ駆け下りるサビの鍵盤が意表をつく。で、山内のギターソロは、高校時代にエマーソン・レイク・アンド・パーマーやミスター・ビッグなんかを弾いていただけあり流麗なのだが、譜割や運指の華麗さより前に、その音のカッコよさにただただ痺れる。演奏というのはつまり人となり。ストイックな生真面目さとともに、ロックやバンドやギターへ注ぐ情熱そのものが鳴っており、こんなの聴いたらハートに火が点いちまう!

③B.O.I.P(2008年)

いっそもっと振り回してほしくなる中毒性

歌に寄り添った3rdアルバム『TEENAGER』にあって、トーキング・ヘッズよろしく、最も爆裂している1曲。暴力的なリフが火を噴き、金澤によるヘンテコサウンドがバンドの推進力を後押し。アドレナリンを大放出しながら邁進し、アンサンブルは加速し続けたままフェードアウトへ。え、着地せずに終わるんかい!という幕切れを含め、爽快にやり切っている……と思ったらまた音量が上がってきて、再びリフが鳴り響き、今度はしっかり締めくくり。ほんとにもう!(笑)

④Sugar!!(2009年)

パワーポップなのにカラフル

志村正彦が生前ラストにしてすべての作詞作曲を担当、パワーポップ色を押し出した4枚目の『CHRONICLE』にも収録されている同作はスウェーデンにて初の海外録音を敢行した1枚でもあり、この“Sugar!!”もそれまでにないサウンドプロダクションの完成度とアイディアを誇る。生音のニュアンスをかき消すほどギャンギャンに歪んだベースや、玉虫色に空間を押し広げるキーボード、バンドたる魂を担保するヘヴィなギターが、ひと突きすれば破裂しそうな風船のようにギリギリのバランスを保つ。なお、山内は本作制作後の脱退も視野に入れていたようで、そういった意味での均衡もひとつの臨界点に達しようとしていた。

⑤徒然モノクローム(2012年)

開花した金澤ダイスケのメロディセンス

使命感に支えられ制作された5thアルバム『MUSIC』、3人体制による再スタートの号砲となった6thアルバム『STAR』を経て、金澤のシンセサイザーをフィーチャーした7thアルバム『VOYAGER』にも収録。そのオープニングを飾る“徒然モノクローム”は、イントロからワイドレンジなサウンドが高揚感を煽っていく。ダリル・ホール&ジョン・オーツを彷彿させる、キレと粘っこさを両立するボトムが心地よく、ジョージ・ハリスンの息吹を宿すスライドギターの名演を多数残してきた山内のお株を奪うかのような金澤のフレージングも、天翔ける龍のごとく奔放だ。ASIAN KUNG-FU GENERATIONでツアーサポートをした経験が稀代のキーボーディストをひと際大きくしたように思う。

⑥バタアシParty Night(2013年)

縁の下どころかもはや天井のグルーヴ

デビュー10周年、すべての楽曲が詞先で仕上げられた8thアルバム『LIFE』にも収録されている、“バタアシParty Night”をピックアップ。言うなれば誰も聴いたことがないディスコロック。東洋的な音運びのシンセリフとフィルターをぐわんぐわんに効かせたギターの絡みが耳を惹くけれども、本曲の影の主役はベースの加藤だろう。ピック弾きでこれだけパーカッシブに、そしてファンキーにプレイできるのはボビー・ベガか加藤くらいでは。グリッサンドによるうねりをさらりと加えているところもニクい。もちろんドラムは必要だが、ドラムレスの3人で制作活動を継続できている一因は加藤のグルーヴにこそある。

⑦カンヌの休日 feat. 山田孝之(2017年)

ギターをひっくり返して弾いた異端者のDNA

最後は、ドラマ『山田孝之のカンヌ映画祭』のオープニングテーマとなった“カンヌの休日 feat. 山田孝之”。超絶前のめりなロックンロールでありつつ、蜂のように刺す金澤のキーボードフィル、ギラギラと毛羽立ったギター音など、型に収まらない点がなんともフジファブリックらしい。カンヌ映画祭でパルムドールを受賞した『パルプ・フィクション』。その劇中に使用され、レフティながら右利き用ストラトキャスターをプレイしたディック・デイル&ヒズ・デル・トーンズの“ミザルー”(ブラック・アイド・ピーズが“パンプ・イット”でサンプリングしたことでも有名)をオマージュする遊び心もとってもステキ。
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