LiSAと『ソードアート・オンライン』が同じ世界線で戦い続けた7つの名曲を徹底解説

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LiSAの新曲“unlasting”。この曲を表題曲としたシングルがリリースされるのは今週12月11日(水)だが、リリースに先駆け10月21日から配信が始まっており、話題になっている。“unlasting”はTVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』のEDテーマ。LiSAが『ソードアート・オンライン』(以下、『SAO』)とタッグを組むのはこの曲でなんと7度目だ。

『SAO』とは、川原礫によるライトノベル、およびそれを原作としたアニメ、ゲーム、コミックシリーズのこと。舞台は、仮想空間へのフルダイブが実現した近未来。流行中のVRMMO(仮想現実大規模多人数オンライン)=「ソードアート・オンライン」をみんなが楽しんでいたところ、開発者が①SAOは自発的ログアウトが不可能であること、②ラスボスを倒してゲームをクリアすることが現実世界に帰還する唯一の方法であること、③ゲーム内で死亡した場合は現実世界のプレイヤー自身も死亡することを明らかに。主人公の少年・キリトら1万人のプレイヤーが突如デスゲームに巻き込まれてしまう。先に言ってしまうとキリトたちは「ソードアート・オンライン」をクリアし、現実世界に戻れるようになるが、後に「SAO事件」と称されるその出来事は物語の幕開けに過ぎず、以降も様々なゲームを舞台にしながら彼らの戦いは続いていく。

「SAO事件」を描いたアニメ第1期『ソードアート・オンライン』、その前半にあたる「アインクラッド」編(第1~14話)のOPテーマは、LiSAの“crossing field”だった。物語中キリトは、後にパートナーとなる少女・アスナをはじめとした様々な人物と出会い、共に戦い、無数の犠牲に心を痛めながら、ラスボスが待つ最上層へ向かっていく。誰かを守りたいと願う自分の心を信じる覚悟。共に戦う仲間に対する信頼。拭えない不安。積み重なる仲間の亡骸と悲しみ。それでも自分を戦場へと駆り立てる勇気。それらが疾走感あるアッパーチューンに託された。LiSAはこの曲を歌うにあたり、「私を信じてくれる君が居る」、「だから私は私を信じ続けられる」というシンガーとしての自身の想いを『SAO』の物語と重ね合わせていたとのこと。サビにある《夢で高く跳んだ躰は/どんな不安纏っても振り払っていく》というフレーズは、登場人物たちの内なる想いと身体的な動きの連動を絶妙に言い表しているし、LiSAのライブパフォーマンスと通ずる部分もある。


アニメ第2期にあたる『ソードアート・オンラインⅡ』では、LiSAは2つのEDテーマを担当した。1つ目は「キャリバー」編(第15~17話)の“No More Time Machine”。聖剣エクスキャリバーの獲得に7人組のパーティーで臨む模様を描いた物語を彩ったのは、何気ない毎日の愛おしさをそのまま音楽にしたような甘酸っぱい曲だった。2つ目は「マザーズ・ロザリオ」編(第18~24話)の“シルシ”。「マザーズ・ロザリオ」編では、現実世界ではエイズの末期患者だった最強のプレイヤー・絶剣とアスナとの間に芽生えた絆が主に描かれている。ED映像における、涙で頬を濡らしながら音楽プレイヤーを再生するアスナの姿も印象深く、また、1番Bメロの歌詞は物語の展開と重なるようであまりに切なかった。この2曲は異なる曲調ではあるが、「今」の尊さを歌っている点は共通。リリース当時のLiSAのブログでは、そんな「今」=永遠に続かないけど大切にしたいものの象徴としてファンを思い浮かべたこと、そうして『SAO』の物語にLiSAの物語を重ね合わせていたことが語られている。

自身がリリースするCDをしばしば「ラブレター」と呼んでいるように、LiSAは曲を発表する際に「君(=ファン)に届ける」という感覚を強く持っているアーティストである。そしてここまでの3曲に関して言うと、LiSAは、『SAO』の楽曲を歌う際にその感覚が一層強くなる傾向にある。“シルシ”に引き続きLiSA自身が歌詞を書いた、劇場版『ソードアート・オンライン-オーディナル・スケール-』の主題歌=“Catch the Moment”でいつになく素直な言葉が並んでいたのも決して偶然ではないだろう。


そしてこれ以降、そこに新たな意味合いが加わる。“Thrill, Risk, Heartless”はゲーム『ソードアート・オンライン フェイタル・バレット』の主題歌。鳴き狂うギターのサウンドを前面に打ち出した、ハイテンポのロックチューンだ。《撃ち抜けよ運命》という言葉がサビ冒頭に選ばれたのは、この作品の舞台が「ガンゲイル・オンライン」という銃撃戦がメインのゲームだからであろう。そしてこの曲で歌われている「自分の道を選ぶのは自分自身」というメッセージは、アニメ第3期『ソードアート・オンライン アリシゼーション』第1~13話のOPテーマ=“ADAMAS”にも共通している。『~アリシゼーション』では、ユージオという人物が自分の住む世界の歪さに気づき、その世界の法を破り、自らの意思でキリトとともに故郷を旅立つ。つまり、“ADAMAS”で歌われる「誰にも征服されない強くて堅い意思」とは、LiSAのアーティストとしての覚悟であり、戦いに赴く『SAO』の登場人物が内に秘めているものでもあった。さらに、例えばDメロにおける英詞のラップなど、“ADAMAS”にはこれまでのLiSAの曲にはなかった要素がたくさん詰まっているが、『SAO』的には『~アリシゼーション』から監督をはじめとしたアニメの制作スタッフが入れ替わっている。両者ともにここで転換点を迎えているのだ。


そしてアニメ第4期『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』のEDテーマ、“unlasting”である。『~War of Underworld』はユージオの死から始まり、親友を失ったキリトは心に深い闇を抱えてしまう。また、キリトたちはこれまで自分自身や仲間のために戦うことがほとんどだったが、現実世界での政治的な要素が絡まり、世界平和のために戦うことを余儀なくされる。そんな物語の展開を反映するように、LiSAは自身の過去を引っ張り出し、傷口を開くようにして歌詞を書いたという。そしてピアノや二胡、電子音による幽玄的なサウンドや、「楽器隊は4拍子なのに歌は8分の6拍子」という譜割りにより独特な浮遊感を演出。今まで絶対的なものとして描かれてきたゲーム上の規律・システムが、徐々に何かに侵されつつあることを予感させる。


要するに、
・『SAO』の物語にLiSAというアーティストの歩みを重ねることにより、物語に寄り添った曲を書くことが可能になっている
・だから核心的な曲、LiSAにとってもファンにとっても大切な曲が生まれやすい傾向にある
・今は長年一緒にやってきた信頼関係が下地にあるため、これまでにない新しい表現が生まれやすい環境になっていてさらに面白い
というのが、LiSA×『SAO』が多くの人を惹きつける理由なのではと思う。シンガーとして新たな領域に突入しつつあるLiSAの活動からも、新たな局面を迎えている『SAO』の物語からも、ますます目が離せなくなりそうだ。(蜂須賀ちなみ)
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