そんなOfficial髭男dismだが、メジャーデビュー前に3作のミニアルバムをリリースしている事をご存知だろうか。『ラブとピースは君の中』、『MAN IN THE MIRROR』、『レポート』と題されたこの3つのアルバムは、それぞれ収録された楽曲が持つ雰囲気やジャンルは違えど、現在の前線ともいえるようなメロディラインや歌詞が垣間見える、ファンにとってはマストチェックな作品だといっていい出来栄えだ。
今回はこの3作を挙げて、改めてOfficial髭男dismの変遷と楽曲づくりの過程、変わらず支持され続けるミュージシャンとしての魅力を綴っていこうと思う。
『ラブとピースは君の中』
“SWEET TWEET”や“恋の前ならえ”など、全体的にラブソングの多い本作。なかでも特徴的なのはなんといっても歌詞の甘酸っぱさ、キュートさだ。
《愛する君の声がどんな歌より聴きたくなった/それだけなんだよ》(“SWEET TWEET”)
“Pretender”で恋愛における複雑な心境を歌った歌詞と比べると、恋の幸せを全力で感じ、それを飾り気なく歌っているという印象を受けるこれらの曲は、まさに彼らが紡ぎ出すラブソングの元祖といったところ。駆け引きめいたジャジーなメロディに乗せて恋の顛末を歌う楽曲は言わずもがな、Official髭男dismの数ある魅力のひとつであるが、思わず胸に手を当てて恍惚と聴き入ってしまうような本作は、彼らのルーツとしての恋愛観を提示しているといえる。
『MAN IN THE MIRROR』
『レポート』
また“異端なスター”は、藤原聡(Vo・Pf)がバンドを結成してボーカルを始めたときに「楽器だけやればいいのに」と周囲に言われたことがきっかけで出来上がった曲。
《ねえ聞いて/面白くなけりゃダメで/見た目が良くなきゃダメで/そうやって選ばれたスター 人気者さ》
歌詞を見ると、当時の藤原が抱いていた思いがそのまま表出されていることが分かり、その背景を知ってから聴くとよりボーカルである藤原の歌声が胸に響くこと請け合いな楽曲となっている。
今や日本のミュージックシーンに欠かせない存在となったOfficial髭男dismだが、こんな風に本心を吐露する曲を残し、ボーカルとして歌った曲もあった。その姿はありのままな音楽を創り続け、嘘偽りなく美しいサウンドをリスナーの耳に届けようとしている今の姿となんら変わりない。何度も音楽と向き合い、様々な視点で、サウンドで、リズムで創り上げてきた楽曲ひとつひとつがOfficial髭男dismの「音」であり、彼らの「音楽」なのだ。
Official髭男dismはいつでも、洗練されている。必ず響く音楽を、私たちに届けてくれる。
そんな彼らが初期にリリースしたこの3作を今一度聴き返して、原点に触れてみたり新たな彼らの魅力を発見してみるのはいかがだろうか。(安藤エヌ)