お正月特別企画! ロッキング・オンが選ぶ2019年間ベスト・アルバムTOP10を発表!(第9位)

あけましておめでとうございます!

2020年を迎えたこのタイミングで、ロッキング・オンが選んだ2019年の「年間ベスト・アルバム」上位10枚を、10位〜1位まで、毎日2作品ずつ順に発表していきます。

年間9位の作品はこちら!

【No.9】
『ノーマン・ファッキング・ロックウェル!』
ラナ・デル・レイ



夢の崩壊と美の誕生

伝統的なもの、古き良き過去への憧れや執着をノスタルジックかつ情緒的な手法で表し、時代の様相を鋭敏に捉え投影するアンテナがその底に流れる喪失と孤独の念をだまし絵のように浮かび上がらせ、それを的確なサウンド・プロダクションが、現代ポップ・ミュージックの最前衛にリンクさせる。ラナ・デル・レイの特質が、圧倒的な完成度と美しさで止揚した、間違いなく彼女の最高傑作であり今年を代表するアルバムである。

ジャック・アントノフと共に作り上げた精密なサウンド・プロダクションは、70年代的シンガー・ソングライターとしてのシンプルな骨格に、レイジーなサイケデリック・ポップの味付けやアブストラクトなトリップホップ、蠢くようなドローン・ノイズなどを加えたもの。キレと厚みのある音響処理を施して、楽曲に古典的な風格と現代的な表情の両方を与えるという離れ業を実現し、さらに曲によってはかなり大胆で実験的な展開を見せる。前作のような豪華ゲストもなく、同じような曲調の憂鬱なバラードが続く内容は一見地味だが、細かいアレンジ面でのアクセントがデリケートでエレガントな陰影と抑揚をつけ、何よりメロディのいい秀逸な楽曲が揃っていて、丁寧に歌い込んでいくラナのボーカルから耳が離せない。ゆったりとした展開の中でも終始ヒリヒリとした緊張感が持続する。これほど凝縮された密度の濃いアルバムは稀だ。

詩作の冴えも特筆に値する。彼女が歌ってきたカリフォルニア・ドリームの終焉を嘆き、髪をブロンドに染めたカニエ・ウェストを揶揄し、新しい革命の到来に戸惑い、古き良きアメリカの日常を描いてきた画家ノーマン・ロックウェルに悪態をつき、「希望は私みたいな女が持つには危険なもの(でも持っている)」と、アンビバレントな心情を歌う。そこに流れているのは、自らが信じ愛し憧れてきたものが毀損し、なお生々しい傷痕となって残っている、今のアメリカの状況に対する悲嘆だ。

“ドゥーイン・タイム”(サブライムのカバーだが、ガーシュウィン〜ビリー・ホリデイの“サマータイム”をモチーフとして引用した曲であることが重要)のMVで巨大化したラナがLAの街を闊歩している。過去にも戻れず、といって現代にも馴染めず、寄る辺のない思いを抱え彷徨する彼女の姿は、言い知れぬ悲しさを漂わせている。(小野島大)

お正月特別企画! ロッキング・オンが選ぶ2019年間ベスト・アルバムTOP10を発表!(第9位)





「年間ベスト・アルバム50」特集の記事は現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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