特別企画! ロッキング・オンが選んだ「2010年代 究極の100枚」からTOP20を発表!(16日目)

特別企画! ロッキング・オンが選んだ「2010年代 究極の100枚」からTOP20を発表!(16日目)

2020年を迎えて早くも初夏に。パンデミックの影響で巣ごもりの時間が長引くなか、音楽を心の拠りどころにする人も多いことでしょう。そこで、ロッキング・オンが選んだ「2010年代のベスト・アルバム 究極の100枚(rockin’on 2020年3月号掲載)」の中から、さらに厳選した20枚を毎日1作品ずつ紹介していきます。

10年間の「究極の100枚」に選ばれた作品はこちら!


2016年
『★』
デヴィッド・ボウイ


特別企画! ロッキング・オンが選んだ「2010年代 究極の100枚」からTOP20を発表!(16日目)

消えぬラスト・メッセージ

死してなおこれほどアクティブなアーティストに出会うというのは、今後も絶対ないだろう。それほど(現在もなお)デヴィッド・ボウイの二次的な創作活動は活発に続いている。ここ数年、出てくるたびに驚かされたヒストリー・ボックスの数々、昨年は『スペイス・オディティ』の19年ミックスに夢中にさせられたし、年明け早々の1月8日(ボウイの誕生日)からは“世界を売った男(The Man Who Sold The Wolrd)”の96年のラジオ・セッションの音源配信が始まり、最終的に未発表&レア音源6曲で構成されたストリーミング限定EPになるという。

また4月にもアルバム・リリースの計画が進行中と、間違いなく天上にいる総合プロデューサーからの指示が行われているはずだ。それらの音源がノスタルジーと書かれた棺に納められることがないのは、ひとえにこの『★』に明確に記された、永遠に挑戦し続ける姿勢と決意があるからだ。

約10分にも及ぶオープナーのタイトル・トラックに始まるアルバムの大きな特徴は、マリア・シュナイダー・オーケストラの新旧メンバーらをはじめ現代ニュー・ジャズの動きを牽引するような人々の参加で、さらにクラウトロックのニュアンスを持つマーク・ジュリアナ(Dr)のたたき出すビートは、70年代後期のボウイにまでつながったりして刺激的なことこの上ない。

こうしたジャズ的なニュアンスを含んだサウンド作りは本作以降、ますますシーンの各所で広がり、プレイヤーたちの活躍も含めジャズ的なアプローチの存在感が増していることを考えると、この作品の意味は重要だ。

そのために前作の『ザ・ネクスト・デイ』をはじめ後期ボウイを支えたような人の名前はそこにはなかったが、それが結果的にはアルバム全体の鮮度と新たな緊張感を生み出すことになっており、それもまたボウイの狙いであったのだろう。

今回のベスト選の中でもビリー・アイリッシュポスト・マローンといったできたてホヤホヤの熱気を放つ人たちにまったく引けをとることなく、このボウイのラスト・アルバムは抜群の現役感オーラを発している。

それは本作で当てられた焦点が、ぴったりと現シーンをとらえていたことの何よりの証左であり、と同時にボウイの過去の諸作品がさまざまな形で生まれ変わって生き生きと流れているからだ。(大鷹俊一)
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