ガンズ、ピストルズ、ボウイetc……「ロックの殿堂」授賞式欠席の13組をエピソードと共にご紹介

ガンズ、ピストルズ、ボウイetc……「ロックの殿堂」授賞式欠席の13組をエピソードと共にご紹介

ボン・ジョヴィ、ムーディー・ブルース、ダイアー・ストレーツ、ザ・カーズニーナ・シモン の5組が2018年の「ロックの殿堂」入りに選ばれたことは先日報じた通りだ。

デビュー25年以降が経過したアーティストが選考の対象となる「ロックの殿堂」だが、毎年選考後にはその結果に関し議論が起こっている。しかし今回の結果に関しては、とりわけ疑問の声が大きいようだ。

その理由として、レディオヘッドが2017年時点で殿堂入りの対象となったことがあるだろう。ここ25年で最も重要なバンドのひとつであるレディオヘッドはなぜ、殿堂入りが許されないのか。それは殿堂入り式典の時期にバンドが南米ツアーを予定しており、式典に出席しないことが予想されるからだとされている。それでなくても、バンドは「ロックの殿堂」そのものについて消極的であることが度々報じられてきた。

さらにレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンもまた今年から対象となっているが、式典への参加を正式に断っているのだという。式典に参加するか否かが殿堂入りについての大きな決定要素となっているとも考えられるが、「Rolling Stone」などはそれもこれまで参加しなかったアーティストが多数存在したからで、恐らくそのことが式典とその興行に影響しているからなのだろうと指摘している。

それでは殿堂入りが決定したにも関わらず、式典やパフォーマンスに参加しなかった例にはどのようなものがあるのだろうか。本記事では、「Rolling Stone」や「Ultimate Classic Rock」に掲載された過去のエピソードを紹介していく。

1988年:ポール・マッカートニー



ポール・マッカートニーはこの4年前からザ・ビートルズの楽曲印税をめぐってオノ・ヨーコジョージ・ハリスンリンゴ・スターから係争を起こされており、ポールは妥協を強いられるのを嫌がってか、参加を拒んだとされている。この年殿堂入りしたザ・ビーチ・ボーイズのマイク・ラヴが「ポール・マッカートニーみたいな人がヨーコとリンゴとの裁判のせいで来ないのは残念だ」とスピーチでぶっちゃけたこともまた話題になった。

1994年:ジェリー・ガルシア


グレイトフル・デッドの他のメンバーは式典参加に賛成していたが、バンド・リーダーのジェリーのみが殿堂の主旨に異を唱え欠席。ほかのメンバーは出席し、ジェリーを模した段ボール製の人型と一緒に登場した。

1994年:ロッド・スチュワート



ロッド・スチュワートはこの年ロサンゼルスを襲った地震のため欠席。「俺の子供、ルネとリアムがこの時、1歳と3歳で、もう地震で怖がっちゃっててね。本当に怖がってるもんだから、置いてけなかったんだよ」とその後欠席のわけを説明している。

1996年:デヴィッド・ボウイ



デヴィッド・ボウイはフィンランドでアウトサイド・ツアーを決行中だったため欠席。マドンナが代理で受賞し、マリアンヌ・フェイスフルが“Rebel Rebel”のパフォーマンスを行った。

1996年:グレイス・スリック


この年、ジェファーソン・エアプレインも殿堂入りを決めていたが、ボーカルのグレイス・スリックは「50を越えたロックンローラーなんてみんなアホにしか見えないしみんな引退するべきだ」という持論を唱え欠席。ほかのメンバーは出席し、パフォーマンスも行った。

1997年:ニール・ヤング



ニール・ヤング自身は1995年に殿堂入りを果たしていたが、この年はバッファロー・スプリングフィールドとしての殿堂入りだったところを欠席。理由ははっきりしていないが、殿堂入りを果たしたほかのメンバーたちが親類知人を式典に招待するため、相当の出費(式典のチケットは高額であることで有名)を主催者側から強いられたと激怒していたことは伝えられている。

1997年:ジョニ・ミッチェル


ジョニ・ミッチェルは殿堂入りしたこの年の式典の直前に21歳の時に養子に出した実の娘との再会を果たしたため、母娘の関係を築くのに専念するため欠席。グラハム・ナッシュが代理で出席した。

2006年:セックス・ピストルズ



バンドは次のような声明とともに出席を拒否したという。

セックス・ピストルズとあの名誉の殿堂の隣には小便の染みがあるぜ。あの博物館のことだよ。ワインに小便混ぜるようなもんだ。俺たちは行かないぜ。おまえら猿回しの猿になるつもりはないんだけど、なにか?

式典に出席して名誉を授けてもらうにはテーブルひとつにつき2万5千ドル(当時のレートで約263万円)、博物館に展示してもらうには1万5千ドル(当時のレートで約157万円)。それが非営利団体に回され、その団体が俺たちに名誉グッズをさんざん売りつける。

詐欺まがいの称賛もいい加減にしろよ。俺たちに投票したというんだったらちゃんと理由も書いたんだろうな。おまえら匿名の審査員はそれでもやっぱり音楽業界の人間だからな。俺たちは行かないよ。お前らがなんにも気づいてないからだよ。セックス・ピストルズはこのクソみたいなシステムの外にいるんだということを。


2007年:エディ・ヴァン・ヘイレンとアレックス・ヴァン・ヘイレン、デヴィッド・リー・ロス


2007年にはヴァン・ヘイレンが殿堂入りを果たしたが、殿堂入りするメンバーは、エディ・ヴァン・ヘイレン、アレックス・ヴァン・ヘイレン、マイケル・アンソニー、デヴィッド・リー・ロスと当時ボーカルだったサミー・ヘイガーと発表された。しかし、バンドは式典直前に1985年に脱退していたデイヴと再結成することを発表し、さらにオリジナル・ベーシストのマイケル・アンソニーの追放も明らかになった。

また、活動再開の前にはエディのアルコール依存症のリハビリが必要になり、結局、式典にはマイケル・アンソニーとサミー・ヘイガーのみが参加した。また、ふたりはこの前年から自分たちの待遇が思わしくないことを察知して「ジ・アザー・ハーフ(もう片方の片割れ)」としてツアーもしていた。

2010年:アグネッタ・フォルツコグとビョルン・ウルヴァース



この年にはアバも殿堂入りを果たしたが、再結成ツアーとして数十億ドル(数千億円)のギャラの申し出を蹴った過去もあるため、メンバーが揃わなかったことは不思議ではなかった。そもそも解散以来、アグネッタ・フォルツコグは滅多にスウェーデンを出ることはないと言われており、ビョルン・ウルヴァースは健康状態が思わしくないと伝えられていた。

式典にはベニー・アンダーソンとアンニ=フリッド・リングスタッドが出席し、ベニーはフェイス・ヒルとのデュエットで“The Winner Takes It All”のパフォーマンスを披露した。

2012年:アクセル・ローズとディジー・リード、イジー・ストラドリン



2012年にはガンズ・アンド・ローゼズがデビュー25年目にして殿堂入りを果たすことに。しかし殿堂入りしたメンバーがオリジナル・メンバーと1997年までの顔触れだったデイジー・リードとマット・ソーラムだったため、ついに90年代のガンズのライブが観られるのかと、この年の「ロックの殿堂」関連のニュースはこの話題に終始することとなった。

当時のガンズのオリジナル・メンバーはアクセル・ローズとディジーのみで、2人以外はその後加入したメンバーばかりだったが、アクセルは今のメンバーが現在のガンズだと重ねて強調。90年代のガンズの再集結を期待するメディアに辟易したアクセルは最終的に欠席することとなった。またその前には「俺が不在の状態で勝手に俺個人が殿堂入りさせられることには強く抗議するし、俺の殿堂入りについては他の誰にも決める権利はないこと、そして誰も俺を代弁することはできないことを承知願いたい」と殿堂入りを拒否する声明を発表していた

式典にはスラッシュ、ダフ・マッケイガン、スティーヴン・アドラー、マット・ソーラム、ギルビー・クラーク(殿堂入りはしていないメンバー)らが出席し、ボーカルにはスラッシュのバンドのボーカルのマイルス・ケネディを迎えてガンズとしてパフォーマンスを行った。なお、オリジナル・メンバーのイジーは殿堂入りを感謝するコメントは発表したが、式典には姿を現さなかった。なお、2016年からはガンズにスラッシュとダフが復帰している。

2012年:ジョン・フルシアンテ


この年にはレッド・ホット・チリ・ペッパーズも殿堂入りを果たしたが、現行メンバーに加え、オリジナル・ドラマーのジャック・アイアンズ、2代目ドラマーのクリフ・マルティネス、オリジナル・ギタリストのヒレル・スロヴァク、2代目ギタリストのジョン・フルシアンテも殿堂入りを果たすことになった。式典とパフォーマンスはほぼ全員出席しパフォーマンスも行ったが、故人のヒレルと2009年に脱退して以来まったくライブ活動を行っていないジョンだけが不在だった。

2012年:ロッド・スチュワート


1994年にソロとして殿堂入りした際にロサンゼルス地震の影響で出席できなかったロッドはこの年、ザ・フェイセズとして殿堂入りした際にもレンサ球菌咽頭炎を発症し、移動はおろか歌うことも出来なくなり欠席した。代理人としてはロッドのバンドのベーシストが駆けつけ、また、ロッドが参加を拒んでいたザ・フェイセズの再結成ツアーでボーカルを務めていたシンプリー・レッドのミック・ハックノールがパフォーマンスで代役を務めた。

なお、ブラック・サバスは2006年に殿堂入りして式典にも出席しているが、1999年には次のように殿堂側を批判する声明を発表していた。

俺たちの名前を候補から外してくれ。インクの無駄だから。俺たちのことはもう忘れてもらっていいから。この候補選びはまったく意味がないんだよ。なぜかというとファンが選んでいるわけじゃないからなんだ。

投票を行っているのは業界やメディアでエリートされている連中で、こいつらは生まれてから一度もレコードやライブのチケットを自分の金で買ったことがない連中だから、こいつらの投票は俺には意味がないんだ。

っていうか、ぶっちゃけブラック・サバスはメディアに気に入られるバンドであったことがないんだよ。俺たちは大衆のバンドで、それが俺たちには一番合ってるんだ。


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