今じゃ“レノンが死んだ時は笑った”って詞を書いたことが恥ずかしい。『アビイ・ロード』は歴史上最高のアルバムの一つだからね(リッチー)
1992年、マニック・ストリート・プリーチャーズは日本初上陸を果たしている。その際とても印象的だったのは、それまで伝え聞かされていた数々のセンセーショナルな言動からは不釣合いな、穏やかで柔らかな彼らの表情と佇まいだった。
本気度を示すために自らの腕に剃刀を当てたりするような人たちにはとても見えなかったし、一連の逸話が実は捏造だったなどと言われたら、きっと僕は信じてしまっていただろう。
この時期のマニックスは、自分たちを取り巻く現実について理解し始めながら、無垢さと裏腹の無知、無防備な自意識といったものについて顧みながら、かといって言い訳じみた発言をするわけでもなく、話題性抜きに自分たちと向き合い、音楽そのものを評価してくれる誰かとの出会いを待っていたように思う。
その初来日時から13か月を経て登場した第2作『ゴールド・アゲインスト・ザ・ソウル』には、そうした時期の彼らの葛藤、苦悩、失望が詰め込まれているが、だからこそ同作は彼らにとって成熟への重要な過程となった。
同作の根底にあった彼らの現実を、今から27年前、93年秋の再来日時の肉声から探ってみよう。(増田勇一)
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