「このバンドであるということが一体何を意味するのかを確認したんだ。それで身動きが取れるようになって、怖気付いたり、くよくよ意味を考えたりすることなくやれるようになった」(マット)
2018年6月7日のロイヤル・アルバート・ホール公演が収められたライブ作品が発売される理由として、バンドは戦争や紛争のトラウマに苦しむウォー・チルドレンへの支援を挙げている。公演と同じく、この作品の収益もすべてチャリティに用いられるという。
そう、2018年5月にリリースされた最新作『トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ』は、彼らが立派な大人になったことを告げる作品だった。2006年のあまりに鮮烈な初作以降、作品毎に確たる挑戦と成長を繰り返し、ついに5作目『AM』で発明的なサウンド・デザインを獲得、セールス的にも過去最高を記録した。
それゆえ、最初の物語に区切りが打たれた次の作品として『トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ』が前作と全く異なる方向性となったこと、しかも2~4枚目と異なり「実験」ではなく仕上がった「成果」として提示されたことは、バンドとしてのひとつの完成を感じさせたのだ。この記事におけるアレックス・ターナーの「こういうものが出来上がったことに本当に感動してる」という言葉には、ただただ凄味が迸っている。(長瀬昇)
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