昨年はコロナ禍で夏、冬と続けて開催中止を余儀なくされたロッキング・オンが制作するサーキットイベントJAPAN'S NEXT 渋谷JACK。これが行われなかった1年半でライブハウスシーンを取り巻く社会状況は一変した。若手アーティストが世に出る「初めの一歩」としてのライブハウス。そのしのぎを削る登竜門としてサーキットイベントは全国各地のどこかしらで1年中開催され、数々のドラマを生んできた。サーキットの魅力ってなんだろう。マイタイムテーブルを組んでまだ無名の新人たちを片っ端からチェックする楽しさ、今はフェスのメインステージに君臨するあのアーティストを数年前サーキットのいちばん小さいライブハウスで発見したんだ、と仲間に自慢できる楽しさ。サーキットイベントにはそれ特有の替え難い熱気とグルーヴが満ち溢れていたのだと思う。
しかしそんな状況に屈することなく、ライブハウス自身が一歩一歩時間をかけながら、偏見と戦い、正しく世間からの信頼を回復する努力を続けてきて今があるのだと思う。
出演は全56組。ライブハウスが似合うギターロックバンドだけでなく、このライブシーンが停滞を余儀なくされた期間に、ネットという空間をフィールドにして急速に発展した「新世代アーティスト」達も多数フィーチャーされ、その初リアルライブを観る機会が作れたことも収穫だ。
O-EASTのトリを務めてくれたreGretGirlの平部(Vo・G)が「ずっと失うことの悲しさを歌にしてきた。でも今まで当たり前にあっていちばん大事なものは失うまで気づけなかった」とライブが失われたこの期間を語ってくれたのがなにより印象的だった。(海津亮)