【知りたい】Chevonはこの5曲を聴いてハマれ!

2021年6月より札幌を拠点に活動している3ピースバンド・Chevon。TikTokバズで火がついたとかではなく、地道にライブ活動を積み重ね、一度観たら忘れられない類稀なパフォーマンス力でファンを獲得し、着実に、でも急速に存在感を増している。ここではChevonの魅力である、谷絹茉優(Vo)のボーカリゼーションや心の繊細な部分と向き合ったダークな詞世界を堪能できる、そしてライブで聴きたい5曲をピックアップした。予習なんて不要なほどにChevonの音楽には人を巻き込むパワーがあるが、このテキストがChevonというバンドをより深く理解するためのきっかけになれば嬉しい。(有本早季)


①光ってろ正義

Chevonのライブで絶対に欠かせない1曲。「どうせ自分なんて」と無力感に支配されてしまった人、あるいは諦める理由を自ら探している人を煽りまくり、蹴り飛ばす勢いで、声を上げて前に進めと奮い立たせる。《凡人の凡人による凡人の為のparade》と歌っているように、自分が特別な何者かでなければ挑戦したらいけないとか、人と違う道を選んだらいけないとか、そんな線引きはない。誰もが自分の人生を生きる権利を持っているし、もし線引きがあるとするなら、諦めた奴/諦めない奴の2択しかない。この曲を聴き終えたとき、我々にはもう《parade》に参加する選択肢しか残っていない。
リリースされたのは本稿執筆時点で約2年前だが、ライブでは歌い方もかなりアップデートされ、より威勢が増していて、サビで飛び跳ねる観客の姿は本当にパレードを見ているようで痛快だ。

②Banquet

厨房でメンバーが生肉を捌いているのが妙におどろおどろしいMVも印象的な“Banquet”。この曲を聴くうえで、バンド名のChevonが「山羊の肉」を表す単語だということに改めて触れておきたい。《善悪美醜綺麗も汚いも/余すこと無くこの身削って一生を賭けたフルコース》《この憂いが叫びが君の血肉に成れば、万々歳》──Chevonの音楽とはなんであるのか、リスナーにとってどういう存在でありたいのか。“Banquet”の歌詞にはその想いがすべて詰め込まれている。谷絹はライブのMCで「いい歌を届けるためには自分は救われなくていい」と話していたこともあったが、まさに自分自身を《喰らい尽くしてくれ》と言わんばかりの狂気と、音楽に全身全霊を捧げる覚悟を感じる曲。
また、一気に高いところに飛躍する高難度なメロディを歌いこなす谷絹のハイトーンや変幻自在な声色に圧倒される曲のひとつでもある。

③ダンス・デカダンス

Chevonの楽曲はインパクト絶大なKtjm(G)のギターフレーズで幕開けることが多い。“ダンス・デカダンス”も、口ずさめるほどの軽快なギターリフから始まるのだが、歌詞で描かれている内容は曲の明るさとは裏腹にネガティブで、うまく生きられない自分自身の葛藤が生々しく綴られている。「しんどいところを明るい曲に乗せて歌いたい」と谷絹がインタビューで話していたこともあるが、まさにどうしようもない不安を音楽というエンタメを通して発散させた曲だ。悩みをひとりで抱えるとどんどん《ツマンナイ思考》に頭を占拠されるし、人にどう思われているかを気にしすぎると《ツマンナイ大人》になってしまっていると自己嫌悪に陥っていく。人に迷惑をかけたくないと日頃思っている人ほど、共感できるのではないだろうか。救いを提示するわけではないけれど、ひとりぼっちでいる人に、自分と同じような人がいることを気づかせ、孤独を和らげてくれる曲だ。

④冥冥

自己紹介的な期間として位置づけた「Chevon第一章」を締め括る2024年のツアータイトルにも掲げていた“冥冥”。ツアーでは終演後BGMでこの曲が流れていたのだが、ほとんどの観客が帰らずにフル尺でコールアンドレスポンスを続ける姿を目の当たりにしたときは衝撃的だった。Chevonのライブのフロアの熱量は、バンドのパフォーマンスが進化していくのと比例するように日に日に高まっていってるが、“冥冥”が結束力をより強固なものにしたと言っても過言ではないだろう。
Chevonの歌詞は、どの漢字を使うのか、ひらがなで書くのかカタカナで書くのか、細部にまで言葉へのこだわりが発揮されているが、“冥冥”は「めいめい」の同音異義語でサビが綴られているので、どうか歌詞を目で見ながら聴いてみてほしい。また、オリエンタルな雰囲気漂うアレンジもこの曲ならではの聴きどころだ。

⑤銃電中

表現を通して死生観に向き合い続けてきた谷絹茉優だからこそ書ける曲。消えてしまいたい気持ちにただ寄り添うのではなく、でも本当は生きたいという気持ちが残っていて、だからこそ今こんなに苦しいのではないかという本心に容赦なく迫ってくる。希死念慮を腫れ物扱いするのではなくて、真正面から見つめ合って音楽に昇華する強さ。《何処かの誰かの正義で悪魔になっちゃう》という一抹の不安を抱えつつも、自分と同じような気持ちを抱えている人を救うために、光に迎合せずに音と言葉と表現力を磨き続けるChevonは、次世代のダークヒーローとなるに違いないと確信させられる曲だ。
そして“ダンス・デカダンス”同様、こういう深い闇の底をさらうような曲ほどやはりアッパーで、心が抉られるにもかかわらず、《充電充電中》と軽やかに口ずさめてしまうのだ。


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【JAPAN最新号】Chevonの快進撃は止まらない! 観客の感情を解放させるライブ、そして暗闇から本心に迫る新曲“銃電中”まで、バンドの今をありのままに語る
「死にたいよね」って共感するんじゃなくて、それって「生きたい」の裏返しだから。 私もそうだし、そういうキモいところがあるよねっていうところまで書きたい 音楽のような正解のないものは、観る側の「好み」というフィルターを通して受け取られるものだが、Chevonのライブは誰もが「すごい」…
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