先日デヴィッド・リンチがニュー・シングルをリリースし、アルバム・リリースも予定していることはこちらでもお伝えしたが、その両A面シングルの“Good Day Today”と“I Know”がともにネットで公開されている。“Good Day Today”は手堅いエレクトロ・トラックになっているが、ふわふわした感じのキーボードの質感が妙に艶かしく、なんとなくリンチ作品のぬるっとした佇まいとスリルを思わせるから不思議だ。
その一方で“I Know”はブルースをモダン・ミュージックとして再構築した刺激的なナンバーで、実にリンチらしい作品。リンチの映像作品に挿入されていたとしてもおかしくない内容で、不安を掻き立てるフラッシュバック・シーンなどに流されていそうなサウンドだ。
ほかにもリミックスEPのリリースも近々予定しているというのだが、この人、どこまで本気なのかと思いきや、音楽活動を続けることについてかなり真剣であるとピッチフォークのインタビューで答えている。「自分のレコーディング・スタジオも持っているから、ずっと実験みたいにして長い間いろいろやってきてたんだよ。エンジニアのビッグ・ディーン・ハーリーと5年くらいそんな調子でやってきてて、なんにも仕上がる感じにならないのが難点といえば難点かな。ただ、そのうち、ぼくのウェブサイトにも音楽専門のページを作ることになるから、やっぱり最近ではかなり音楽に没頭していると言えるんだと思うな」。
将来的に考えているリリースはエレクトロ・アルバムどころの話ではなく、現在検討している作品のラインナップをこう説明している。「とりあえず、アルバムにしそうなモダン・ブルースのプロジェクトがあるんだよね。あとはアンジェロ・バダラメンティ(リンチ作品の音楽を多く手がけている作曲家)とは『Thought Gang』というプロジェクトを制作していて、これは自分のホームページでリリースするかも。ほかにもクリスタ・ベルというボーカリストともプロジェクトも進めていて、こちらは新年にアルバムが出る運びなんだ。映画で使われることになる曲もいろいろあるし、単発の曲もかなり揃ってるんだよ。無料で公開する音源もあるけど、とりあえずなんか買ってもらわないとね(笑)」。
そもそもリンチを音楽に引き込んだのもバダラメンティで「ミュージシャンではない自分もこれに関わっていいんだという気にさせてくれたんだよ」と説明している。「ぼくとしては音楽って本当に直感的にやってることなんだよ。それにミュージシャンっていうタイプの人たちがそもそもぼくは大好きなんだよ。もちろん、ミュージシャンっていうのはいつもいつも機嫌がいいタイプの人間ではないけれども、音楽をやっている時はすごく幸福そうに見えるし、それは見ていてとても美しいと思うんだ。それとぼくもミュージシャンの多くがそうであるように、朝は遅くまで寝てるからね。ミュージシャンには子供みたいなところがあると思うよ」。
また、デジタル映像の先駆者として知られるリンチだが、音におけるデジタルとアナログの差異についてこう語っている。「ミュージシャンにはベースとドラムをアナログで録りたがる人が多くて、それはテープでの音にひずみを出したがっているからで、ぼくはそれは確かに美しいなと思うね。だから、ぼくたちもそうしてるんだ。デジタルに関していえば、最終的にはみんなそこに落ち着くことになるわけだからね。でも、アナログっていうのはね、本当に思いもよらなかったものをもたらしたりするんだよね。それに最近では、みんなデジタルで音を作っても、アナログもまた出すからね、本当に素晴らしい世界になったと思うよ」。
ちなみに最近、気に入っているアーティストはオ・ルヴォワール・シモーヌとリッシーで、リッシーについてはレディー・ガガの“バッド・ロマンス”のカバーをYouTubeで発見してはまってしまったとか。
“Good Day Today”を聴くにはこちらから→(http://www.guardian.co.uk/music/musicblog/2010/nov/29/david-lynch-good-day-today)
“I Know”を聴くにはこちらから→(http://www.youtube.com/watch?v=soClkzqJSZs