ナップスターとは一体何だったのか、映画『Downloaded』の監督が振り返る
2013.07.05 22:30
かつて90年代末にファイル共有サービスとして立ち上げられ、音源ファイルが自由にやりとりされて大きなブームと問題を巻き起こしたナップスターの明暗を描いたドキュメンタリー作品『Downloaded』がネットで配信が開始されている。
作品は今年のサウス・バイ・サウスウェスト・フェスティヴァルで初公開され、先月末から一般公開もされ、話題を呼んでいるが、監督のアレックス・ウィンターは「ぼくたちが目撃してきたものは業界内での単なる対立というものではなかったと、誰対誰という単純なものではなかったと思うんだ」とこの作品で追っているテーマについて語っている。
ナップスターはファイル共有ソフトを利用することでユーザー全員が自分の音源ファイルを共有しやりとりできるシステムになっていたが、音源の著作権は当然まったく無視したものになっていたため、その後アメリカ・レコード産業協会がナップスターの運営を阻止するために、多数の訴訟を起こすことになり、そうした反ナップスターの旗手として声を上げたアーティストのひとつがメタリカだった。
その後、ナップスターは訴訟に負け、倒産に追い込まれた後、通常の音楽配信サービスへと業態を変え、最終的にはストリーミング・サービスに乗り出していたが、度重なる身売りを経て「ナップスター」という企業名も消失している。しかし、90年代末にファイル共有ソフトで爆発的なブームになった時にMP3も同時に爆発的に普及したため、現在のデジタル音楽隆盛の流れを作った大きな事件の一つとも言われている。
作品では業界やアーティスト側からのナップスターへの批判や怒りを取り上げると同時に、当時ナップスターの主なユーザーとなっていた学生間でナップスターを中心に大きなコミュニティが形成されていたことや、ソフトを開発したショーン・ファンニングとその後フェイスブックの経営に加わっていくショーン・パーカーとの友情なども紹介されていく。
ドキュメンタリーをまとめたウィンター監督は10年以上経った現在の状況を次のように語っている。
「ぼくとしては思いがけなかったのは、今もまだくすぶっている怒りのその大きさだよね。2013年になってもなお、まだ01年と同じくらいにみんな憤っていることに僕としては衝撃を受けたよ。つまり、これは明らかにアーティスト側はその後も待遇が改善されていないということなんだよね。もっとましな仕組みがかなりの度合いで必要とされているということだと思うよ」
その一方でウィンター監督は次のように自身のナップスター経験を語っている。
「ぼくの経験はすごく前向きなものだったな。ぼくが最初にダウンロードしたのはジョン・コルトレーンの1967年のスウェーデンのストックホルムでのライヴのブートレグだったんだ。ものすごい高音質で、その時、ファンの連中と知り合うことになって、いまでも連絡を取り合っているくらいなんだよ。ナップスターというのは、フェイスブックとユーチューブとiChatとiTunesが全部一緒くたになって区分けなく流動的に一つのサービスとして機能しているようなものだったんだよ。ナップスターがかつてやったことを今提供しているサービスなんてひとつも存在していないんだ」