フー・ファイターズ、メタリカといったバンドのツアマネが自分たちの仕事を語る

フー・ファイターズ、メタリカといったバンドのツアマネが自分たちの仕事を語る

ロック・バンドのツアーで現場監督としてツアーに同行し、ライヴを仕切っているツアー・マネージャーだが、有力ツアー・マネージャーが一堂に会して『ビルボード』誌にツアーのなんたるかを語っている。

パンク・ロック系のツアー・スタッフとして活動を始め、今ではフー・ファイターズ、エミネム、パール・ジャム、ナイン・インチ・ネイルズのツアー・マネージャーを手がけるガス・ブラントはツアー・マネージャーという仕事を次のように説明している。
「俺たちのやってることは本当に込み入ってて、まともじゃない、まるで高尚さとは無縁な仕事なんだよ。バーブラ・ストライサンドが自分に対してキレまくるとか、フー・ファイターズのデイヴ・グロールがチーズの匂いで腹を立てるとか、その瞬間を見極められるかどうかが俺たちの仕事なんだ。なにもほんとにデイヴがそういうことをしたわけじゃないよ。話のたとえとしてそう言っただけなんだけど」

その一方でメタリカ、ジョージ・マイケル、ウィーザーなどのツアー・マネージャーを務め、ロラパルーザにも関わったスチュアート・ロスはかつてのロック・バンドのツアーについて次のように振り返っている。
「60年代にはバンドにはスタッフなんて1人か2人くらいいるのがせいぜいで、そいつらが何でもかんでもやってたもんだよ。俺は16歳の頃、ドアーズの機材の面倒をみることになって、バンドはあともう1人だけ、ヴィンス・トリーラーをツアーに連れて来てたんだ。ヴィンスは公演地で人夫を集めてきては、俺とヴィンスはただで働いていたんだよ。サウンド、照明、バンドの送り迎え、そして興行屋からの支払いの受け取りは全部ヴィンスがやってたんだ」

さらにかつてはツアー・スタッフが女目当てでツアーの次の公演地までの道程まで決めていたものだったそうだったが、80年代に入ると、ロックのライヴもツアーも次第にまともなビジネスと変質していったという。この道40年のマーティ・オムはその理由を次のように説明している。
「あまりにもお金が入り込んでくるようになったからだよ。だから、そういうバカ騒ぎは終わらざるを得なかったんだよね。バカなことばっかりやってられなくなったんだよ。人が食っていくための合法的な、巨大なビジネスに変わり始めて行ったんだ。アーティストのためだけでなく、タレントのために働いているスタッフのための仕事にもなっていったんだよ。関わってりゃ、それで食っていけるし、家も買えるし、子供も学校に行かせられるようになったんだからね。あの頃、ものすごく変化したんだよね。みんなね、自分たちのやってることについてマジになり始めたんだよ。それでも楽しかったし、今でも大好きだし、でも、これはもうビジネスなんだよ」

さらにオムはライヴとその安全性に賭ける意気込みについて次のように説明している。
「スペインでシャキーラの完売になったライヴをスタジアムで仕込んでたことがあったんだけど、機材搬入の時に、ステージの一角の底が抜けちゃったんだよね。それで興行屋とステージの設営を請け負ってた連中を制作進行室に呼びつけたんだ。事情を訊いたら『安全なはずです』って言うから、俺は連中の目を見てこう言ったんだよ、『わかった、であれば、ライヴの間ずっと、おまえは俺の隣に立って、おまえの子供も家族も全員呼んで、それであのステージの下で過ごすことになるからな。なぜかっていうと、おまえらの言ってることは、俺の家族をあのステージの下に立たせるのと同じことなんだからな』ってね。それからなんの言葉もなく、沈黙だけになっちゃってね。それで『じゃあ、俺の答えを言うよ』と言って、ライヴの中止を発表したんだ」

その一方で、今まで経験した最大の危機として、アリス・クーパーのツアーを長く手がけているデイヴィッド・リバートは次のように振り返っている。
「アリスのヴァンクーヴァーでのライヴがあって、ライヴでアリスが舞台装置につまずいた拍子に、そのままぴょんぴょんって片足で横っ跳びしながら、結局、ピットの中に落ちちゃったことがあったんだよね。そうしたら頭蓋骨が割れちゃうような大怪我をしててね。ただ、まだ2曲くらいしかやってないんだよ。それで楽屋裏までいったん避難させて、こっちも相当重症だとわかってるんだ。でも、こう言ったんだよ、『頭をしっかり包帯で巻くからまた舞台に戻って2、3曲やってくれないか。そうしないと、延期扱いになって、俺たちへの支払いは出ないし、きみもまたここに戻らなきゃならなくなるんだ』ってね。そこが動機だったわけだよ。『ステージに行って、2、3曲だけやってくれ。今、どんなに状態が悪くても、2、3曲やらなかったところで、それは明日になってもたいして変わりゃしないから』って。そこでアリスの頭を包帯で巻いてあげて、赤いインキで血で染まっているような演出して、もう3曲ほどやって、ステージでわざとぱたっと昏倒してもらったんだよ。それで俺たちがアリスをステージから担ぎ下ろして、スタッフ全員がその日のギャラにもありつけることになったんだ」
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