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日本のロック・グレイツの登場である。佐野元春。言うまでもない、音楽的な革新と共に都市的な文学性を日本語によるロックに打ち立てた第一人者だ。そして、この日のライヴはそんな彼の偉大さを見事に伝えてくれるものだった。最新作の『THE SUN』収録の“国のための準備”を除けば、すべて80年代の楽曲。熱心なファンにはたまらなかっただろう。昨年2006年、アルバム・リリースから20周年だった『カフェ・ボヘミア』からの“99ブルース”“インディビジュアリスト”、今もまったく革新性を失わない“コンプリケーション・シェイクダウン”、そして“約束の橋”“サムデイ”。「このステージには10代、20代、30代の人がいると思うけど、そういう人たちの前でこの曲をやれるのは嬉しい」。“サムデイ”の前にそう佐野元春は言ったが、若いオーディエンスこそこの日のステージには驚かされたのではないか。佐野元春の音楽が持つ豊かさ、広さ、深さ。“アンジェリーナ”の後にバンドによるセッションで生まれた客席からのコール&レスポンスの声の大きさがそれを雄弁に物語っていた。(古川琢也)