『るろうに剣心 伝説の最期編』を観た


CUTは、かなり早い段階から映画『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』の取材をしてきて、連載を持ってくれている大友啓史監督や、主演の佐藤健をはじめ、数多くのスタッフやキャストに映画『るろうに剣心』に関する話を訊き続けてきた。
そのなかで一番強く感じたことは、この映画を作った人々はキャストもスタッフもみな「侍」だということである。
みな心の中に「侍」を持っていて、こと映画作りに挑むにあたって、その心の中の侍が「刀」を振るいはじめる――そんな人々ばかりが集まって映画『るろうに剣心』は作られているということを強く感じた。

平和な時代においては、侍が刀を振るう必要はない。
侍が刀を振るわずに済むのが理想の世の中である。
しかし平和な時代、理想の世の中を守るために、力を持つものが刀を振るわなければならないときがある。
その矛盾を象徴しているのが剣心の「不殺(ころさず)の誓い」であり、彼の武器である「逆刃刀(さかばとう)」である。
平和な時代において「映画」というものは、ときどきこの「逆刃刀」に似ている。
そして映画『るろうに剣心』そのものが、この映画を作った「侍」たちの「逆刃刀」だったのだと、僕は完結編であるこの『るろうに剣心 伝説の最期編』を観て思った。

『るろうに剣心 伝説の最期編』は、映画『るろうに剣心』シリーズの集大成だからこそ、前2作とは比べものにならないくらいの巨大な狂気と哀しみに満ちている。
しかし「侍」のように映画作りに向き合う人々が、その狂気と哀しみの向こう側へとまっすぐに突き抜けたことによって、この映画は忘れられない痛みと共に「平和」と「愛」を観客の心に強く焼き付ける映画となった。

8月19日発売のCUTの、佐藤健とTaka(ONE OK ROCK)の対談もまた「侍」同士の対話になっています。(古河)
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