宇多田ヒカルとヱヴァ、宇多田ヒカルと浜崎あゆみ



宇多田ヒカルのデビュー15周年記念企画ソングカバー・アルバム『宇多田ヒカルのうた -13組の音楽家による13の解釈について-』の12月9日リリースを記念してさまざまな分野のクリエイターたちが宇多田ヒカル、または彼女の楽曲をテーマにした作品を制作するプロモーション企画の大トリを飾る作品として、『ヱヴァンゲリオン新劇場版』チーム(鶴巻和哉監督・スタジオカラー制作)による”Beautiful World”のプロモーションビデオが発表されました。

《僕の世界消えるまで会えぬなら/君の側で眠らせて どんな場所でも結構》(“Beautiful world”)
《どんなに怖くたって目を逸らさないよ/全ての終わりに愛があるなら》(“桜流し”)

宇多田ヒカルが『ヱヴァンゲリオン新劇場版』のために書いたこの2曲には、「愛」と「死」と「生」のことがとてもパーソナルなタッチで歌われている。
そして「エヴァンゲリオン」という今や、いくつもの展開と結末を持ち、「閉じない物語」として作り手と受け手との間で生き続けている物語が、宇多田ヒカルのなかでどのように生きているのかがはっきりとわかり、だからこそ普遍的に「エヴァンゲリオン」という作品を象徴する楽曲になっている。
この鶴巻監督による“Beautiful World”のプロモーションビデオもまた『ヱヴァンゲリオン新劇場版』の映像を主軸にしながら、その物語を飛び超えて、私たちひとりひとりの中に生きる「エヴァ」に直接アクセスしてくるような普遍的な映像作品になっている。
本当に素晴らしいコラボレーションだ。
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そして、この『宇多田ヒカルのうた -13組の音楽家による13の解釈について-』の内容がすごい。
錚々たる参加アーティストたちの力と楽曲の力がぶつかり合った宇多田ヒカルのソングカバーアルバムでなければ到達できない内容の1枚になっている。
しかし、なかでも浜崎あゆみによる“Movin’ on without you”は、想像を超えた圧倒的に鬼気迫るカバーだった。
オファーした宇多田サイド、引き受けた浜崎サイド、両者の度量と気迫が生んだ、最早カバーという概念を超越したトラックだ。
ヒットチャート的な視点からは見えなかった、ふたりが重なるピュアな領域があるのを感じる。(古河)
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