ツアーの最終日というよりも、そんな言葉の方が相応しいライブだった。
約半年前の10月に僕は、このツアーの前半の日本武道館のライブを観て、見事な構成のライブだと思った。
やっぱりサカナクションは、すげえ!と思った。
しかし今、思えばきっと彼らは久々にライブ活動を再開するにあたって、それぞれに不安や葛藤を抱えていたのだろう。
もしかしたら不安や葛藤があるからこそ、ここまで凝縮された演出と練り込まれたセットリストと工夫を凝らしたアレンジに満ちたショーが出来上がったのかもしれない。
なぜそう思ったかと言うと、半年に及ぶツアーから帰ってきた今日のライブでは、その構成の見事さが完全にサカナクションのライブの楽しさに呑み込まれていたからだ。
数々の演出も、バンドセットの曲もDJセットの曲も、ノれる曲も踊れる曲もポップな曲も聴かせる曲も、新しい曲も古い曲も、何もかも繋ぎ目がなくなって、すべては音楽の楽しさに集約されていた。
あの考え抜かれたショーを半年間かけて「楽しさ」として肉体化していった結果、5人は完全にサカナクションを取り戻した。
いや、1年半のライブ活動のブランクの間にそれぞれが経験したこともバンドとして咀嚼して、新たな強さを手に入れたと言ったほうがいい。
そんなサカナクションのライブだから最初から最後までひたすら楽しかった。
これから、もっともっとたくさん曲を作って、早く新しいアルバムを聴かせてほしい。
もっともっと新しい音楽の聴かせ方、観せ方、伝え方、体験の仕方を編み出して僕たちを驚かせてほしい。(古河)