もう音が磨き抜かれまくった達人ビートなケミカルズ30分からのホワイト・ステージ大トリ、ウィルコ! ああ、フジの終わりが見えてきてしまう……。長い物語のプロローグのようにゆったりと、噛み締めるように音と歌が始まる。
昨年の来日は観ることが出来なかったので感慨もひとしおだ。ああ、“アイ・アム・トライング・トゥ・ブレイク・ユア・ハート”が沁みる。ロックは、音楽はきっと、その歴史を重荷にすることなく今を生きるための糧に、武器にすることができる。今回のフジを通して、何度も突きつけられてきたそのことが、ウィルコのステージに集約されている気がする。(小池宏和)