ストレイテナーのホリエアツシがプロデュースを務めた今作は、キャッチーで重厚感のあるリフで始まり、疾走するようなサビで一気に突き抜ける、生命力あふれるロックナンバーだ。かつてのゴールドラッシュで、一攫千金を求めてひたすらに穴を掘り続けた金採掘者のように、「このままで終わってたまるか」というフラッドの不屈の精神が、サウンドからも、佐々木亮介(Vo・G)の歌声からも、そして歌詞からもありありと伝わってくる。
バンドを鼓舞するように、《武道館 取んだ3年後 赤でも恥でもやんぞ》といったストレートな言葉を織り交ぜつつも、《通過点と言いやがった奴らに 置き去りくらっても/当たるまで 掘れ》《真面目すぎた恥ずいダサいこだわりが/後で救いになるってそそのかす月》など、うまくいかない自分への苛立ちやくさくさした心を解放してくれるような歌詞は、リスナーを置き去りにしない佐々木の絶妙なバランス感を物語っているようだ。
とにかくサウンドも歌詞もかっこいいのだが、その中に遊びが数多く入っているのも、この曲の中毒性をさらに増幅させる大きな要素だと思う。たとえばイントロ前の、曲の世界にワープしてきたようなゲーム音、アウトロ最後の『ガキ使』をオマージュしたという音(田中、アウト〜のときの「デデーン」)、《真似して吠えてた 小型犬ズ ワン(ワン)》で響く犬の鳴き声、《印税やっぱちゃんと頂戴》で流れるマリオがコインをゲットしたときの音……などなど盛りだくさん。
この遊び心はホリエのアイデアによるところも大きいようで、今作に関するインタビューにて、佐々木はこれをホリエの「チョケ心」と表現している。フラッドの重厚なロック感に、こんなに違和感なく、というかむしろないと困る!レベルでチョケ心を入れられるホリエのプロデュース力に思わずうなってしまう。
フラッドらしさを全面に出しながら、今までにないフラッドも感じさせる。でも、これも新しいフラッドらしさとしてしっくり来るから面白い。両者の化学反応が最高な形で花開いた“ゴールド・ディガーズ”、現在公開中の佐々木亮介×ホリエアツシの対談インタビューとあわせてぜひチェックしてほしい。(藤澤香菜)