ホラーゲームを題材にしているのに、踊れる??
「なとりのルーツの一つである『ホラーゲーム』をコンセプトに制作された楽曲」で、「4つ打ちで踊れる音楽性」という楽曲の紹介文を見て、頭の中がハテナでいっぱいになった。
そして、実際に曲を聴いてみて驚いた。浮遊感を覚える4つ打ちのビートは「ホラーゲーム」のイメージからは遠く、艶っぽい夜を連想させたからだ。紹介文の通り、思わず身体が揺れるサウンド。しかし聴き進めると、その中になんとも言えない「違和感」が埋め込まれていることに気がついた。
たとえば冒頭の、うめき声のような、古い床がきしむような不穏な音。
たとえば夢と現をさまよっているような不可解な歌詞。
たとえば急にフッと音が消えるアウトロの不気味な余韻。
そして “Sleepwalk” (夢遊病)というタイトル。
通して聴くと落ち着いた華やかさや妖艶さのあるサウンドが、だからこそ、より一層違和感や不自然さを際立たせている。いや、反対に、違和感や不自然さのエッセンスが、このサウンドをひときわ美しいものにしているとも言える。
すべて計算かもしれないし、的外れな考察かもしれない。すべてはなとりの手の内だ。
彼の楽曲はいつもこちらの想像力を掻き立てる。そしていつも翻弄されてしまうのだった。(藤澤香菜)
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また、なとりに翻弄されてしまった。新曲 “Sleepwalk”がひときわ妖艶で美しい理由を考えてみる
2023.12.16 21:00