back number@武道館、清水依与吏の歌を聴いて思ったこと


たとえば、野球選手でいうところの「速い球を投げる力」や「遠くに飛ばす力」や、陸上選手でいう「早く走る力」といったシンプルな強さと同じように、「いい曲を書く力」において言うなら、若手のバンドではback numberはぶっちぎりだと思っていた。
初の武道館を観てそれははっきりと確信に変わった。
しかし、もうひとつ、「いい曲を書く」だけでなく、いい曲を「歌い、届ける力」においてもやはりぶっちぎりなのだ、ということもよくわかった。

清水依与吏の歌はすごい。
歌詞、メロディに込められた物語をこれだけ情熱的に歌い上げ、それでいて、リスナーひとりひとりの思いに寄り添うようなやさしい浸透力をもった歌を歌えるヴォーカリストはそれだけで稀有だ。
清水は、この恋の歌に入り込みながら、ときにまるで詩を朗読しているかのような少し引いた距離感で歌ったりもする。
そして、そのモノローグ感が聴き手の物語を喚起し、やさしく受け入れていく。
実は本当にアクロバティックなことを、清水依与吏はやり続けている。

モノローグ感と書いたが、back numberのパーソナルなラブソングが、武道館を埋めた約一万人のオーディンスのパーソナルな部分とこれほどまでにシンクロしてしまうのは、清水が突き詰めて綴る「心の中の独り言」がやはり普遍的な心情をずばり射抜いているからだろう。
変な言い方になってしまうが、それは本当に大好きな恋愛マンガを読んでいるときのような、モノローグにいちいちぐっときてしまうあの感じによく似ている。
ひとつひとつの言葉が何度もよみがえってきてしまうところもよく似ている。
まるでこの物語の主人公になったような、そんな気持ちにさせられてしまう。

話が逸れましたが、ぐうの音も出ない本当に素晴らしいライヴだった。
小栁大輔の「にこにこちゅーんず」の最新記事