2010年上半期私的ベスト・アルバム 第7位


The Drumsの『The Drums』を選出。

恥も外聞もないポップ・メロディ。甘ったるくスッカスカなサウンド・アレンジ。日本の中学生が書いた英文のラブ・レターのようなベタなリリック。The Drumsの楽曲は、そのどれもがそんな意地悪な形容を微塵も嫌がらない要素で出来ている。その歌は、恋をしたといっては飛び上がらんばかりに喜び、それを失ったといえば地面に頭をめり込ませんばかりに哀しがる純朴青年の青い季節が思う様綴られているものだ。

それはだから、阿呆のような歌である。90年代以降、よりシリアスでよりディープな音へと進み続けているロックの世界においてそれは、異様ですらある。というか、それは異様ということにおいて、そうした「シリアスでディープ」であろうとするロックを対象化してしまった。

一方、その実、わたしたちは、「シリアスでディープ」であろうとするロックのすべてが、そうでもないことに気づいている。残念ながらその多くが、そうした時代の空気をなぞっただけの、言ってしまえばむしろそのことによって薄っぺらい音にしか結実していない事実に退屈している。

The Drumsは、ここ20年ほどのロック・ミュージックがタブーとしてきたことすべてを臆面もなく提出したことによって、そのことを告発してしまった。そこにThe Drumsの痛快さはあった。

そして、忘れてならないのは、そうした告発が、その圧倒的なポップネスによってもたらされていたことと同時に、その作り手たちが、そのポップネスを、まさに「シリアス」に憧憬していたこと、である。