【トロント映画祭】新聞記者版『アベンジャーズ』のような"THE SPOTLIGHT"と"TRUTH"。実話に基づく娯楽大作の傑作!

  • 【トロント映画祭】新聞記者版『アベンジャーズ』のような"THE SPOTLIGHT"と"TRUTH"。実話に基づく娯楽大作の傑作! - Photo by WireImage/Getty for TIFF

    Photo by WireImage/Getty for TIFF

  • 【トロント映画祭】新聞記者版『アベンジャーズ』のような"THE SPOTLIGHT"と"TRUTH"。実話に基づく娯楽大作の傑作! - Photo by WireImage/Getty for TIFF

    Photo by WireImage/Getty for TIFF

  • 【トロント映画祭】新聞記者版『アベンジャーズ』のような"THE SPOTLIGHT"と"TRUTH"。実話に基づく娯楽大作の傑作! - Photo Courtesy of TIFF

    Photo Courtesy of TIFF

  • 【トロント映画祭】新聞記者版『アベンジャーズ』のような"THE SPOTLIGHT"と"TRUTH"。実話に基づく娯楽大作の傑作! - Photo by WireImage/Getty for TIFF
  • 【トロント映画祭】新聞記者版『アベンジャーズ』のような"THE SPOTLIGHT"と"TRUTH"。実話に基づく娯楽大作の傑作! - Photo by WireImage/Getty for TIFF
  • 【トロント映画祭】新聞記者版『アベンジャーズ』のような"THE SPOTLIGHT"と"TRUTH"。実話に基づく娯楽大作の傑作! - Photo Courtesy of TIFF

今年のトロント映画祭は娯楽大作の名作/傑作が目白押しだったのだが、その中でも一番と言いたいくらいの作品が"THE SPOTLIGHT"だ。これは実話を基にした作品で、新聞社ボストン・グローブ紙が、カトリック教会の性的虐待事件を暴いていく様を映画化したもの。これが何もかも素晴らしい。監督、脚本、俳優のアンサンブル、編集、そのすべてが奇跡的に完成されているのだ。熱血記者役のマーク・ラファロと、静かで威厳があるスーパーヒーローのような人物を演じるリーブ・シュレイバーが、とりわけ秀でた演技を見せている。しかしマイケル・キートンもスタンリー・トゥッチも、もちろん素晴らしい。最高のチームワークだ。ジャーナリズムの活躍を扱った作品を作る時、「『大統領の陰謀』を目指した」と言う監督が多いのだが、この作品は本当にそのレベルに達したと言いたくなる。


プレミア上映では、彼らのモデルとなった記者が現れたのだけど、監督トム・マッカーシーの言葉を借りれば「まるで宇宙飛行士が登場したかのような喝采で観客に迎えられた」そうだ。監督には「日本にはカトリック教徒が少ないけど、この映画はどう受けとめられるかな?」と聞かれたけど「まったく問題ないです。映画が素晴らしすぎますので」と答えておいた。テーマ自体はとてもダークなものだけれども、とにかく娯楽大作として思いきり楽しめる作品になっているから心配ないだろう。

結局のところ"THE SPOTLIGHT"は、今ではインターネットの普及でその威厳が危ぶまれているメディアやジャーナリズムの元来の強さを提示してみせた作品である。そして、私は冒頭で『アベンジャーズ』のようだとついチープに書いてしまったが、ここ最近ヒーローと言えばアメコミヒーローに頼ってきた映画界で、ようやく人間にも出番が回ってきたと思える作品でもある。リーブ・シュレイバーにも「自分の演じた記者に実際会ってみてどうでしたか?」と聞いたら、「これまでに自分が見たどんな人よりも威厳があって、人間的に本当に素晴らしい人だった」と熱く語ってくれた。

もう1本は、ケイト・ブランシェットとロバート・レッドフォードが演じる"TRUTH"という作品だ。これも実話を基にしている。
"THE SPOTLIGHT"には、真実を暴くために全員が一丸となって突き進むというわかりやすい物語の構造があるのだけれど、こちらはもう少し難しい題材に挑戦している。

具体的なストーリーは、アメリカの民放局CBSの看板ニュース番組『60ミニッツ』のプロデューサーとアンカーが、ブッシュ再選キャンペーンの最中に、彼がベトナム戦争時に「徴兵逃れ」をしたという疑惑を暴こうとするものだ。ケイト・ブランシェットが主役のプロデューサーを演じ、レッドフォードがアンカーを演じる。プロデューサーはブッシュの「徴兵逃れ」を証明しようとまっしぐらに突き進むのだが、あるひとつの真実=TRUTHを確認し忘れてしまう。インターネット上にはアクセスを獲得するための言葉や情報が氾濫する今だからこそ、ジャーナリズムにおける”真実”の境界線を問いかける作品だ。これも非常にエンターテイニングでありながら、観ながら様々なことを考えさせられる内容になっている。ケイト・ブランシェットがカッコいい。
中村明美の「ニューヨーク通信」の最新記事
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする